「都内の公立校では、これまでICT推進をしたい教員が色々提案しても、『一律にできないから』といってすべて拒否、結局ICT授業は一切しないままに学校再開になる学校が多くあります。ようやく機器やWi-Fi環境を調査する連絡をしたばかりの中で、ICT教育はストップしてしまうのではと、現場では心配している教師が少なくありません

6月1日からの再開を前にそう語るのは、都内の公立小学校に勤務する教諭だ。
2月27日に安倍晋三首相が「要請」し、3月2日から1都3県の休校が始まった。4月7日の1都3県への緊急事態宣言、15日の全国への拡大、そして5月終わりの緊急事態宣言解除の会見まで、長い所では3ヵ月近く、休校が続いていたことになる。

再開と言っても、分散しての限られた時間の登校で、ソーシャルディスタンスを保ち、三密を避けるために現場でも様々な対策が必要になる、教室などの消毒も現場の教師が行うことになるという。

そんな中で、現場教師が恐れるのが「再開によってICT教育推進が止まってしまう」ことだという。そう思う背景には、文部科学省も驚くような「ICT教育を妨げる動き」があった。

東京23区でICT教育は
「トップランナー」わずか4区

5月11日に公開された文部科学省の「学校の情報環境設備に関する説明会」と題してライブ配信されたYoutube動画に対し、現場の教員たちから「よくぞ言ってくれた!」「素晴らしい!」と称賛の声が集まっている。

この動画から明確にわかるのは、「現場の教員がICT教育をやりたいと言っても潰してきた人たちがいた」という現実だ。

動画で何が語られているかをお伝えする前に、では実際どの程度「ICT教育は実施されずにいたか」を東京都23区を例に見てみよう。元リクルートの森田亜矢子さんが立ち上げたサイト「ぱぱままSTART UP」で公開した「23区内公立小『ICT取り組み状況』草の根ウォッチ」によると、23区のうち5月18日までに分かっている限り、オンラインでの双方向指導が始まっていたのはわずか豊島区、文京区、千代田区、渋谷区の4区のみ。中央区では保護者からの要請でオンラインを用いた双方向コミュニケーションは始まっていた。それ以外では「進行中」「検討中」「なにもしていない」という区がほとんどだ。

「ぱぱままSTART UP」より
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ちなみにオランダ在住のライター・倉田直子さんが2回にわたって寄稿してくれた記事によると、「世界一の教育」とも言われるオランダでは、3月15日に全国的休校の政府決定が発表された同日の夜学校から一斉メールで「教育を止めない」と通知された。翌日「ICT環境のための機器やWi-Fi環境の有無」の確認がなされ、貸し出しも含めて休校3日目から双方向授業が行われていた

フランスでもいち早くオンラインを使った自宅学習が始まったが、双方向のコミュニケーションではなく、オンラインで課題を送り、それを自宅でプリントアウトするという「アナログなオンライン」だった。それによりプリント用紙が売り切れる騒ぎも起こり、子どもたちが孤独に学ぶ状況が問題視されたと、フランス在住の下野真緒さんが伝えている。写真は3月のフランスの家 Photo by Getty Images

日本では、2月27日に要請されたあとに大きな動きがなかったが、休校が進むにつれ、FBページでは「オンライン授業を通してこれからの教育を考えようプロジェクト」「#臨時休校中の学ばせ方」など、教員や危機感を持つ人たちが集うグループが立ち上がっていった。どのようにICT教育をしたらいいのか、といった情報交換もさかんで、教育現場の光を感じることもできた。

しかし、これらを含めた勉強会などで多く聞かれたのは「ICTを取り入れようとしても管理職から潰されてしまった」という悲鳴のような声だった。
「その事実を、文部科学省が明言した」とも言えるのが、5月11日にYoutubeにアップされた動画なのである。基本的に自治体や学校の管理職に向けた、2時間以上に及ぶ説明会の中から一部ご紹介しよう。