木村花さん(Photo by gettyimages)

SNSの奴隷となり毎日「2分間憎悪」に精を出す人の虚しい人生

「関心経済」が人命を奪い始めた

テレビに「リアル」はありえない

女子プロレスラー木村花さんの死をめぐって様々な議論が巻き起こっています。

特にリアリティ番組の出演者への誹謗中傷に大きく焦点が当たっている通り、言うまでもなく、誹謗中傷を行なったネットユーザーには重大な責任があります。一方で、ローコストで最大限の注目を集めて利益を上げたいコンテンツ制作者の手法と、感情の拡散・増幅装置であるソーシャルメディアの特性が「最悪の形で」組み合わさり、顕在化した悲劇という面もあります。

 

今のところ動きとしては、5月26日に高市早苗総務相が匿名発信者の特定を容易にして、悪意ある投稿を抑止するための制度改正を検討する考えを表明。年内に改正案をまとめる方針です。

また、フジテレビと番組制作会社のイースト・エンタテインメントは5月27日、木村さんが出演していた問題のリアリティ番組「TERRACE HOUSE TOKYO 2019-2020」の打ち切りを発表。そして、29日にフジテレビは、報道各社の質問への回答として、遠藤龍之介社長の「私どもの認識が十分ではなかった」などとするコメントを出しました。

木村さんがソーシャルメディアで誹謗中傷されるきっかけになったのは、番組内での「素行」だったといいます。とりわけ自身のプロレス用衣装を同居の男性に勝手に洗濯され、傷んでしまったことに対して激怒したエピソードが決定的だったようです。

木村さんは「一緒に住むんだったら、人のこともっと考えて暮らせよ。限界だよ、もう」と嘆息。「本当ごめん。“ごめん” しか言えない」と繰り返し謝る男性に、「ふざけた帽子かぶってんじゃねえよ」と男性の帽子を掴んで投げ落としました。男性はその後退去したこともあり、ソーシャルメディア上で批判が殺到しました。

まず大前提として、そもそもヤラセなしのリアリティ番組というものはあり得ません。場所やメンバーやルール、シチュエーションなどの設定自体が制作サイドで用意されている場合がほとんどですし、隠しカメラを含む複数のカメラが入り込み、編集が施されている時点で、すべてが「虚構」に様変わりします。あらかじめ台本がないとか、出演者を一般人から募っているとか、ドキュメンタリータッチの風味を加えているため、普通のドラマと比べて相対的に「本物っぽさ」が醸し出されるだけなのです。

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