中国の「対米ヘイト言論」が暴走中…「戦狼」ナショナリズムの行方

外敵を作り国民の注意をそらす?
古畑 康雄 プロフィール

「総加速師」習近平

2017年の中国映画『ウルフ・オブ・ウォー』(原題は『戦狼』)「犯我中華者、雖遠必誅」(我が中華を犯す者は、遠きにありても必ずや誅せん)という決め台詞で大ヒット。ポスターは日本公開時のもの。(配給・KADOKAWA)

新型コロナを発端とした米中の対立が深める中、中国のネットでは最近、国家安全法の強行や、外交官を駆使して攻撃的な主張や中国の「マスク外交」への称賛を要求する「戦狼外交」(戦狼については2018年10月17日公開の「中国『武闘派女性記者』が英国保守党大会で大乱闘…の深層心理」でも取り上げた)を繰り広げる指導者、習近平国家主席に対し、「総加速師」というあだ名が密かに広がっているという。

「総加速師」とは、市場経済導入や対外開放政策を進めた鄧小平が「改革開放の総設計師」と呼ばれたのに対し、米国への対抗路線や香港の国家安全法、南シナ海での主権の主張など、矢継ぎ早に強硬策を取っている習主席が中国の進む道をますます加速させている、という意味で使われている。

これが何の道へ向かって加速しているのかはあえて言わないが、習主席のこうした「加速」ぶりも、民意の支持があるからこそ、大胆になれるのだろう。いわば中国の世論自体が、「戦狼化」しているのだが、その原因はどこにあるのだろうか。

中国の民間世論の「戦狼化」を印象付ける出来事が、4月にタイであった。

 

台湾メディアなどの報道によれば、タイのある男性アイドルのガールフレンドが、インスタグラムに出した自分の写真に対し、男性が「とてもきれいだ、中国の女の子のようだ」とほめたところ「(中国じゃなくて)台湾の女の子よ!」と返事をしたのを中国のネットユーザーが見つけ、翻訳したことで「台湾を中国の一部と考える中国のネットユーザーのガラスのような心を傷つけ」、彼らのアカウントが攻撃されたという。