これは日本のスゴさ?ヤバさ?緊急事態に生まれた「電車内の新ルール」

日本を覆った独特の「空気」の記録
堀井 憲一郎 プロフィール

空気を読む人、読まない人

電車内での新しい「一席空きのルール」でも、みんながみんな、守っているわけではない。

「暗黙の了解」なので、そんなの知らない、という客がところどころで出現する。

7人掛けのまん真ん中(D)にどかっとすわって、べつだん気にしていない人がいる。それはそれでいいんである。どっちの人も混じって存在していて、この社会は成り立っているのだ。多数派と少数派という区分はあるが、どっちもいないとたぶん脆弱な社会になってしまう。

何度か見てるうちに、何となく気がついたのは、「空気を読んで新ルールにすぐ順応している人」と「読まない人」の差である。

「誰かが言い出したわけではない暗黙の了解」に従って一席おきに座っているのは、「働いている人」が多いようにおもう。だいたい昼のルールなので(朝夕のラッシュ時はそこまで空いていない)、昼にも仕事で移動している人とか、仕事の一環で動いてる人たちだ。つまり頭が「仕事」の状態である。社会に従っているモードのときだ。

この人たちは、見えぬルールをさっさと読み取り、それにすぐに従う。

〔PHOTO〕iStock
 

まんなかにどかっと座っちゃうとか、あいだに座ってくる人は、私の狭い範囲でみた限りだと「働いてない人」(少なくともいまは勤務の途中ではなさそうな人)に見えた。

ひとつは老人。いきなり真ん中に座って、いまどき新聞をひろびろと広げて見たりしている。昼の電車で新聞を広げている人は、もはや昭和からタイムスリップしてきた人のようで感動的ですらあるのだが、そういう人はまん真ん中に座りがちである。おそらく生活は家庭内とその周辺が中心で、あまり忖度をしないでも生活しているのだろうな、と勝手に想像してしまう。

あとは、お買い物に出てきたような感じの主婦ぽい人。早い話が、わかりやすい「おばちゃん」は隙間を狙ってくる。

これまた勝手なイメージだけど(いくつか実見はしてますが)、まん真ん中にどかっと座るのはおじいちゃんで、空いてるのを見たらすぐ隣に人がいてもあまり気にせず座るのがおばちゃんという感じなのだ。混んできたら一席空きを埋めてもかまわないのだが、ちょっと横に目を転じれば、つまり少し移動すれば一席空きがキープできる状態なのに、目の前の空席にすっと座ってしまうところがおばちゃんの本領発揮という感じである。私はちょっと微笑ましくなってしまう。