これは日本のスゴさ?ヤバさ?緊急事態に生まれた「電車内の新ルール」

日本を覆った独特の「空気」の記録
堀井 憲一郎 プロフィール

みんなで空気を読み合う

東京らしいと何度か書いているが、べつだん東京育ちの人だけしか守れないルールというわけではない。「東京」というものに対してある一定のイメージを持っている日本人でさえあれば(日本人にさえも限らないけど)、しばらく東京で暮らせばわりと身につけられるルール(空気)のことを指している。

誰かが何となくやると、ふっと気付いた人が同じようにやる。

最初にルールがあるわけではなく、何となくみんなで察して、言語化せずに、ルールを形成していく。

一緒に練習してきたサッカーチームの仲間みたいである(ホッケーでもバレーでも水球でもいいけど)。アイコンタクトだけでそれぞれの意思を感知し、もしくは全体の空気だけで次の動きを読み、自分も有効な動きを取る。

おそらく、われわれはほんとうにそういう練習をしてきているからだろう。

この社会のなかで育つと、子供のころからみんなの意志を読み取って、つまり空気を読んで、多くの人が取る行動を予想し、それに合わせて行動する。そういうふうに訓練している。

〔PHOTO〕iStock
 

東京人だけの訓練ではない。社会全体でやってる訓練である。

どこで育っても、たとえば東京に出てくると東京の空気を読むことで「東京らしさ」をみんなで形成する。もし岩手に映り住めばそこの空気を読んでそれに合わせようとするだろう。そういう能力をみな多少、備えている。

悪く言えば、同調圧力。

良く言うなら、誰かに指示されなくても自分たちでチーム全体のポジションを決めてそのまま進める力。