どこからが“ほんとう”かわからない面白さ

俳優の指定した場所で、俳優自身がふだん着ている服や小道具などを使い、極めて俳優の日常に近い環境で撮影する。そんなイレギュラーな方法で撮影したことで、何が起こったか。

それは、ドラマというフィクションの世界に「リアル」があふれ出すという、通常なら考えられないエンターテインメント性が生まれたこと。ストーリー自体は脚本家やディレクターたちが考えた完全なフィクションだが、画面には俳優の「日常の断片」が映し出される。

すると視聴者は、「どこまでがフィクションで、どこからが“ほんとう”なのかわからない」という心理状態に陥る。

例えば、第1夜の『心はホノルル、彼にはピーナッツバター』では、冒頭から前田亜季さんがウェディングベールに模したストールをかぶり、ブーケをイメージしたほこり取り用のハタキを持って登場した。画面に映るウォーターサーバーも、キッチンや家具も、普段俳優が使っているものかもしれない、と思わせるドキドキ感があった。もちろん、実際は「本人が用意した」だけであって本人が日頃使っているかはわからない。

ちなみに、第1夜でインターホンが鳴って宅配業者が来るシーンがあるが、制作ブログによれば、あれは実際に撮影中に起こったハプニングのようだ。筆者は「あとで音効を足したのかな?」「誰が押したんだろう?」とそわそわしながら見てしまった。

こうした「フィクションに現実が侵食していく」様子は、回を追うごとに深まっている。

第2夜の『さよならMy Way!』でも、竹下景子さんは自宅リビングとおぼしき瀟洒な調度品の飾られた場所から出演し、小日向文世さんは自身の稽古部屋のようなシンプルな部屋からの出演だった。竹下さん演じる妻が小日向さん演じる夫にクイズを出題するという物語のスタイルに、SNSはかつて竹下さんが出演していた伝説のクイズ番組『クイズダービー』のオマージュではないかと大いに盛り上がった。