新型コロナウィルスの影響はドラマや演劇、映画などエンターテインメント業界にも及んでいる。緊急事態宣言は25日に解除されたものの、4〜5月の2カ月間、朝ドラや大河ドラマをはじめとする多くのドラマが撮影中止を余儀なくされた。

結果、4月期の連続ドラマは軒並み放映延期、あるいは撮影済みの2〜3話放映したところで中断となり、過去のドラマの再放送へと順次切り替わっていった。

そんな緊急事態宣言下で、いち早く新撮ドラマに取り組んだのがNHKのドラマ制作チームだ。タイトルは『今だから、新作ドラマ作ってみました』という30分の短編からなる3部作。新作ドラマが消滅しゆく世界で、さみしい気持ちを変えるドラマファンの気持ちを見事に代弁したタイトルだった。

『今だから、新作ドラマ作ってみました』(C)NHK

打ち合わせから撮影まですべてリモートワークで制作したという、通称「リモートドラマ」。このドラマから見えてきたのは、「現実がフィクションに浸食する」というリモート時代のドラマのあり方だ。20年以上ドラマ分析をしてきた目線から、これからドラマはもっと面白くなるということを伝えたい。

俳優自ら機材をセッティング

NHKがゴールデンウィーク中に放映したドラマ『今だから、新作ドラマ作ってみました』は、30分のドラマを3回にわたって放映したオムニバスドラマだ。制作ブログや本編の映像によると、出演者はマイクロソフトのテレビ会議ツール「Teams」越しに演技をし、セリフを交わす。その様子をドラマとして放映した。

撮影場所はすべて俳優が自ら指定。それだけでなく、撮影にスタッフは一切同伴しない。俳優は自分のパソコンに「Teams」をダウンロードするところから自力で行い、カメラなども自分でセッティング。使用した機材はスマホ、ミニマイク、小さな3脚、そして「Teams」のみだったという。スタッフはこの機材一式を俳優のもとに送り届け、「Teams」越しにセッティングの仕方を教えたのだという。

衣装・メイク・小道具・食事もすべて出演者自身が準備。どの出演者も自前の衣装にセルフメイクで挑んだのだそうだ。特に、第3夜の『転・コウ・生』で登場した料理は、柴咲コウさんや高橋一生さんが自ら用意したものだそう。もちろん打ち合わせ、リハーサル、本番、演出もすべてテレビ会議ツールの画面越しにリモートワークで行われた。

撮影も困難を極めたという。撮影をはじめたら、ネットワーク環境が混戦して「Teams」がうまく動作しなかったり、録画ボタンを押し忘れてしまったり。演技している途中で、セッティングしたスマホのカメラがずれてしまったこともあったそうだ。こうした撮影時の苦労は、制作ブログに詳しい。

日ごろITツールやガジェットを使い慣れていない出演者たちにとって、機器の操作はたいそう難しかったことだろう。この2カ月で40回ほどオンライン取材をこなした筆者でも、テレビ会議ツールで録画・録音したデータの保存先がわからなくなって戸惑うことは未だにある。

こうして、企画からわずか2週間足らずという脅威のスピードで、3話分の撮影が完了した。