「院内感染」は
症状がない人からも起こりうる

私たちが誤解してはいけないのは、慈恵医大の大きな院内感染はクルーズ船の患者さんとはまったく無関係に起きたということだ。佐村さんは言う。
「院内感染はダイヤモンドプリンセス号の患者さんたちからの感染ではありません。ダイヤモンドプリンセス号の患者さんを受け容れて1ヵ月ほど経ってから、新型コロナウイルス感染症ではない疾病のため一般病棟に入院された患者さんからウイルスが持ちこまれ、その方の処置に当たった医師、看護師の感染が起きました」

院内感染の多くは感染者とは全然わからない患者から始まる、という事実は全国各地で起きた他の院内感染を見ても明らか。

検査開始から約1ヵ月が経過し、慈恵医大の産科では、数十名が院内検査センターのPCR検査を受けた。幸い、陽性になった妊婦はいなかった。
東京都の感染者数がピークを過ぎた4月末からのスタートだったので、ひとりも出なかったのかもしれない。慶応義塾大学病院は、やはり症状はない入院患者全員のPCR検査を、慈恵医大より早くから実施している。そして結果を病院ホームページで発表しているが、それによると最も陽性率が高かった4月13日~19日には、67名中5名(7.46%)が陽性だった。

米国産科婦人科学会(The American College of Obstetricians and Gynecologists : ACOG)が発行する会誌には、4月のニューヨークでは、無症状の妊婦155人、立会い者146人全員にPCR検査を実施したところ、妊婦の15.5%、立会い者の9.6%が陽性を示したという報告も載っている。

5月28日までに36万人の感染者数で、2万人以上の方が亡くなり、臨時で船上病院も作られたNYと比較すると、日本は感染者数も少ない。ただ、大きな第二波が来うることを考えると、海外の報告も参考に知っておく方がいいだろう Photo by Getty Images

感染者が再び増えてきたら、お産を控えた元気な妊婦の中からも陽性者が出る可能性は十分にある。5月末現在、東京都も感染がおさまってきた状態だが、佐村さんは、しばらく全員のPCR検査は継続して第二波を警戒したいという。