敗戦が迫り、ポツダム宣言を受諾するか否かで議論になった。政府が最後までこだわったのは「国体は護持されるのか」だった。
連合軍に問い合わせると、日本国民が自由に決めてよい、と回答があった。それなら、と無条件降伏を受け入れた。
天皇がラジオ放送で、降伏を命じた。アメリカ軍は、武力抵抗を覚悟して進駐したが、あまり順調で拍子抜けした。これまでの「鬼畜米英」はどこに消えたのか。なぜアメリカの戦後改革はうまく行ったのか。
アメリカの軍事占領がうまく行ったのは、日本人が「天皇親政」の考えになじんでいたからだと思う。
天皇親政は、憲法を超えて、天皇が人びとを直接に支配することである。天皇は連合国軍司令官マッカーサーに従属することになった。マッカーサーは、天皇の大権を上回る権力をもつ。超憲法的な統治権である。大権を上回る権力だから、やはり大権であろう。これを、「アメリカ大権」とよぼう。
マッカーサーは、アメリカ大権にもとづき、帝国憲法や日本国憲法の頭越しに、改革を進めた。農地解放、財閥解体、憲法改正、民主主義……。その改革のなかみは、北一輝の『日本改造法案大綱』と驚くほど似ている。
北一輝は、青年将校が決起し、天皇大権を発動して「改造」を進めるプランを描いた。軍事力で日本を制圧し、大権を振りかざして改革を進めるやり方がそっくりである。天皇親政が、本当に実現した。
戦後日本は、『國體の本義』の理想がついに実現した社会にほかならない。