また、はやみね作品を読んで育ち、現在は作家や編集者、書店員、図書館司書など本にたずさわる仕事についているという人も多い。
SNS上では、そうした“はやみねチルドレン”たちがそれぞれの作品の魅力や奥深さを喧伝してくれていて、デビュー30周年を機に“はやみねかおるブーム”が巻き起こっている。
では、「子どもも大人も夢中にさせる物語」とは、一体どんなものなのか? その疑問を解く鍵は、はやみねさん自身の経歴にあった。
小学校の頃から、江戸川乱歩やシャーロック・ホームズなどの推理小説を乱読してきたというはやみねさんが初めて小説を書いたのは、小学6年生のとき。以来、ずっと「プロの物書きになりたい」と思っていたが、「どうやったらプロ作家になれるのか」がわからず、大学を卒業して進んだ道は、小学校の教師だった。
<もともと教師になるつもりはなかったんですけど、兄の影響で三重大学の教育学部に入って、大学3年のときに教育実習に行ったんです。そのとき、子どもたちがぼくのような人間に対して、『先生』と呼んでくれましてね。すごく感動しました。
教師になりたての頃は、スキル不足もあって45分の授業時間が5分ぐらい余ってしまい、その時間を使って、星新一さんや小松左京さんの短編を聞かせるようになりました。すると、授業中は退屈したような顔をしていた子も、目を輝かせてお話を聞いてくれたんです。
読み聞かせる本がなくなったので、試しに自分で書いていた物語を聞かせてみたら、「ぜんぜんオモロない」と言われてしまいまして……ショックでした。(笑)それで、子どもたちが喜んでくれる話を目標に、童話を書くようになりました。
その頃、担任していた2年生のクラスで悪口がはやりまして、どうしたものかと真剣に考えて、悪口を盗む「怪盗道化師(ピエロ)」のお話を書きました。それを聞かせると、今度はみんなが「おもしろい!」と言ってくれたんです。
子どもたちは、面白いものには正直に反応します。それを肌で感じることができて、どういうストーリーにすれば面白がってもらえるか、とても勉強になりました>