多発する「自粛警察」の全貌…背景に「正義の暴走」と「嫉妬の発露」

「非常時だから」で終わらせてはならない
辻田 真佐憲 プロフィール

また、前回の拙稿で、「おそらく役所の電話口には、『あいつの家はひそかに旅行しているぞ』などという通報がいくつも届いているのではないか」とも指摘しておいたが、残念ながらこの予想はあたってしまったらしい。

愛知県警には、コロナ関係の110番通報が4月より急増しており、これまでに「自粛なのに、外でカップルがいちゃついている」「この店は自粛していない」「外で遊んでいる人がいる」などの通報が寄せられた(朝日新聞、5月21日)。

ここまでくると、もはや戦時下の「ぜいたくは敵だ」「日本人ならぜいたくは出来ない筈だ」の世界だ。

「皆殺し」と「いちゃついている」では遠いようにも見える。ただ、その人間がもともと持っていた醜悪な部分がコロナ騒動で表出したという点では、共通している。非常時が人々の感覚を麻痺させると述べる理由もここにある。

 

自粛警察の背景に「正義の暴走」と「嫉妬の発散」

それにしても、「道徳警察」はどんな人間がやっているのか。それがわかってきたのが、今月の特色でもある。

東京都豊島区では、飲食店2店舗のドアに「営業するな! 火付けるぞ!」と書いた段ボールが貼り付けられる事件があったが、その犯人は、同区役所職員の男性だった。警視庁によると「感染者が増えていた恐怖から、間違った正義感を持ってやってしまった」という(NHK、5月22日)。

同じく東京・高円寺では、かねてより「次発見すれば、警察を呼びます。 近所の人」「態々カーテンで目隠ししてまで営業して協力金請求しようと思ってませんよね? これで請求したら詐欺罪か偽証罪になりますよ」などの張り紙がライブハウスや飲食店に貼り付けられる被害が出ていたが、ある飲食店の店主がその犯人と疑われている(女性自身、5月11日)。

後者は特定されたわけではないものの、日ごろの嫉妬が防疫という大義名分を得て、嫌がらせ行為に発展したようだ。

「自粛警察」の背景にはこれまで、「正義の暴走」と「嫉妬の発散」があると指摘されてきた。この2件には、それがまさに当てはまる。感情に踊らされないためにも、自分のなかにもそういう部分がないかどうか、胸に手を当てて考えてみる必要がありそうである。