「系統」と「分類」のちがい
現在の地球の生物は、大きく2つのグループに分けられる。細菌とアーキアだ。私たちヒトは、アーキアに含まれる。
アーキアの細胞には2種類ある。細胞の中にはDNAがあるが、そのDNAの周りに核膜を持つもの(つまり細胞核があるもの)と、持たないものの2種類だ。
細胞核を持つものを真核生物と呼び、他のアーキアと区別する流儀もある。真核生物はアーキアの一部と考えられるが、ここでは便宜的に、地球の生物を細菌とアーキアと真核生物の3つに分けて、話を進めよう。
ところで、少しややこしいが、細菌とアーキアを原核生物(核を持たない生物)として1つにまとめ、真核生物と区別することもある。系統的には、アーキアと真核生物が1つにまとめられるが、見た目の特徴からは、アーキアと細菌が1つにまとめられるのである(下表)。

視点を変えて、身近な例で考えてみよう。
サメとマグロとヒトは、大昔は同じ1つの種だった(下図)。そこから、最初にサメに至る系統が分かれ、そのあとでマグロに至る系統とヒトに至る系統が分かれた。だから、ヒトとサメより、ヒトとマグロのほうが、系統的に近縁なのだ。マグロから見た場合は、サメよりもヒトのほうが近縁ということになる。

ところが、サメとマグロは魚類に分類され、ヒトは哺乳類に分類される。それは、ヒトよりも、サメとマグロのほうが(少なくとも見た目は)似ているからだ。サメとマグロには鰭(ひれ)や鰓(えら)があるが、ヒトにはない。ヒトには手足や耳があるが、サメとマグロにはない。
とはいえ、ヒトとマグロが似ているところもある。たとえば、ヒトとマグロの骨格はおもに硬骨だが、サメは軟骨だ。
しかし、全体的に見れば、サメとマグロのほうが似ているところが多いだろう。
おおざっぱに言うと、似ているものをまとめたものが分類で、それは必ずしも系統的な近さと一致しないのである。