旅作家・歩りえこさんのベストセラー『ブラを捨て旅に出よう』では、貧乏旅をしながら約2年をかけてほぼ世界一周した旅の様子が綴られていますが、FRaU web連載「世界94カ国で出会った男たち」(毎月2回更新)では、著書には掲載されていない世界各地で出会った男性との仰天エピソードをお伝えしています。

今回は、旅先で偶然出会って以来、SNSを通じて交流を深めていたイラン人男性との話。紳士的だと思っていたのに、あることをきっかけに別人のように豹変してしまった男性。一体何があったのか……。

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違約金460万円!?
ビザ取得も入国できない?

以前アルメニアを旅した時、親切なイラン人兄妹に出会った。以来Facebookを通じて交流を深め「招待ビザを申請してあげるからイランにおいでよ」とずっと言われていたが、当時のイランは女性が簡単に一人旅できる国ではなかった。友人から招待ビザを大使館に申請してもらうか、団体ツアーに参加するしか方法がない。

ペルシア文化には惹かれるものがあるし、治安に心配がなければ行ってみたい。でも日々のニュースでは経済封鎖で物価が上昇、イスラエルやアメリカとの対立関係と、ますます行きづらい国になると感じさせるものばかり。今後、渡航困難な国になってしまうかも……。「今行かないと後悔する」とイラン行きを決意した

イラン人兄妹の兄であるムラト(仮名)がすぐに招待ビザを申請してくれ、それを元に大使館で観光ビザを申請した。いつもは思い立ってすぐ旅立つことができるのに、手続きに1ヵ月以上、3回大使館に通うほど面倒だとは想像以上だ

ペルセポリスはシリアのパルミラ遺跡・ヨルダンのペトラ遺跡と並んで中東の3大遺跡と呼ばれている。写真提供/歩りえこ

出発3日前ギリギリでビザを取得し、いざ空港へ! しかし、問題が勃発! 航空会社職員が信じられないことを言った。「このパスポートで搭乗しても入国拒否の恐れがあります。ご搭乗されないほうが良いと思います」え! 何で? 1ヵ月もかけビザを取得して万全に準備したのに! 頭が真っ白になり、興奮気味に理由を聞いた。

お客様のパスポートにイスラエル入国スタンプがあります。イスラエルと対立関係にあるので入国を拒否する可能性が非常に高いです。イラン政府からパスポートに不備のある乗客を乗せた場合、違約金が発生する可能性があり、これまで一番高い違約金はサウジアラビア政府が請求した460万円です。違約金を全額負担するサインを頂ければご搭乗できますが、されない場合はご搭乗になれません。2年間勤務していますが、イラン行きでイスラエルスタンプがあるお客様は初めてです」

460万円! そんな、まさかの搭乗拒否!? イランで入国拒否なら仕方ないけど、航空代金も払ってるし、搭乗すらできないなんてあんまりだ……。イスラエルスタンプがあると他の中東諸国入国が難しくなることは知っている。でも外務省HPにイスラエル入国歴があるとNGな国にイランは明記されていなかった。現に何人もの旅友がイスラエルスタンプ有りでイラン入国していたのだ。

460万円はかなりの高額、とても払える額ではない。とりあえず手当たり次第友人に連絡してみた。すると誰もが「乗らない方がいい。自分なら絶対、家に引き返す」という答え。ムラトに電話すると「サインして乗って! スタンプは関係ない。100%大丈夫」との答え。でもさ……460万円払うかもしれないのは私よ? 1時間ほど悩み、カウンター締切5分前になって覚悟を決めた。「私、乗ります」。

入国拒否されたら乗り継ぎのカタールで帰国便まで滞在すればいい。あんなに長く手続きを要した大使館が、イスラエルスタンプを見落とすはずがない。正式にビザ取得でき、入国に何の問題もないはず。決意を固め、万が一の違約金460万円の支払いにサインをし、搭乗した。