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木村花さんを守ることはできなかったのか?「働き方」視点で考える

「才能で食べる人」を傷つけないために
常見 陽平 プロフィール

なお、レスラーは収入面でも幅がある。新日本プロレスのトップレスラーはさすがに高年俸だが、かつてメジャーと呼ばれた団体のトップレスラーでも月収が同世代のサラリーマン以下の人、さらには1試合数万円という人もいる。先日、新型コロナウイルスで試合が減り困窮するレスラーという記事を目にしたが、よく読むとそもそも新型コロナ以前からプロレスだけで食べることができていなかったことが可視化されていた。

グッズの売上なども貴重な収入源だ。新宿FACEや新木場1stリングなどに参戦するインディーレスラーは、数万円のギャラで出場し、試合が終わり次第、グッズ売り場に直行し、サインや写真撮影に応じつつ、グッズを売りさばく。

新型コロナウイルスショックでライブイベントが中止や延期となっている。ライブイベントに通っていたものとして胸が痛む問題だが、普段から彼ら彼女たちは収入面でも、契約面でも不安定だった。なんとしてでも、ジャンルと、そこで活躍する才能を応援したいのだが、そもそも普段から関係者とファンにとって都合よく扱われる、不安定な存在なのだ。

レスラーはファンにとっては夢の存在だ。しかし、収入面では必ずしも恵まれているとは言えない。輸入車に乗り、大酒を飲むというレスラー像は過去の、ごく一部のものである。

このように、プロレスラーは契約上も収入上も不安定だと言わざるを得ない。プロレス団体は、彼ら彼女たちに活動の場を与える以上の何かができているだろうか。そして、仮に非雇用だったとした場合、指揮命令系統下にある状態で、契約を大きく超える、過酷な環境、過剰な要求に晒されていないだろうか。

 

「悪役」と悪人は違う

亡くなった木村花さんは、悪役(ヒール)として活動していた。しかし、この「悪役」という存在についても深く考えたい。「悪」ではなく「悪役」なのだ。リアリティショーに彼女を出した番組関係者も、悪役として起用していた団体もそのリスクを把握していただろうか。

Photo by Gettyimages

悪役レスラーは「会えばいい人だった」という話がよくある。たとえば、数年前に放送されたドキュメンタリーでは、悪役レスラーとして活躍してきたアブドーラ・ザ・ブッチャーが、サービス精神旺盛で写真撮影に気さくに応じていた様子などが描かれていた。

しかし、悪役であることの代償も大きい。家やクルマにイタズラをされた人もいる。入退場時や、リングにモノを投げられることすらある。もちろん、悪役は嫌われて盛り上げるのが仕事である。ブーイングは勲章だとも言える。しかし、彼女にとってその荷は重すぎなかったか。

番組制作サイドも、団体関係者も死には驚いているだろうが、申し訳ないが、少なくともこの1ヶ月の彼女の状況をみると過剰な役割だと察知できたはずだ。なぜ、止めなかったのか。