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木村花さんを守ることはできなかったのか?「働き方」視点で考える

「才能で食べる人」を傷つけないために
常見 陽平 プロフィール

ここで男女の差を持ち出したくはないが、とはいえ女性で、人前に出る仕事をしている人はSNSでのいやがらせの格好の標的になりやすい。SNSでの誹謗中傷の問題は後述するが、番組制作サイドも、なにより団体関係者も彼女を守る方法を具体的に考えるべきだった。

団体関係者はケアしていたというが、少なくとも番組や団体として、木村花選手に対する誹謗中傷が相次いでいるということについて警鐘を鳴らすべきだっただろう。それが火に油をそそぐかもしれないが。

これ自体本質的な解決になっていないという声もあるだろうが、SNSアカウントをスタッフ管理とするなどは一つの手である。芸能人、特にセクシータレントがよく導入している手段である。ツイートもさせないし、見させない。すべてをスタッフを経由するやり方である。

 

屈強なようで弱いプロレスラーという存在

リング上では強そうに見えるプロレスラーという仕事の「弱さ」も指摘しておきたい。結論から言うと、不安定そのものである。

レスラーと団体の関係、および収入は実に様々だ。「○○団体所属レスラー」なる肩書きをまず疑ってかからなくてはならない。ここで「雇用」「非雇用」という大きな差が存在する。しかも、それは公にはならないことが多い。

表記の上では「団体に入団した」「○○団体所属」と表記されるが、実際に「社員」として「雇用」されているとは限らない。フリーランスとして契約している例もある。

だから、ある団体の興行に出場する「○○団体所属○○軍のリーダー」なるレスラーと、「○○ジュニア王座に輝いたあと、団体を離脱し、フリーの立場で今大会を襲撃」という触れ込みで参戦しているレスラーが、二人とも団体の「社員」ではないことはよくある話だ。

ただし、ここでフリーランスを始めとする「雇われない働き方」の根本的な問題が明らかになる。

雇用と非雇用には大きな違いがある。レスラーにおいても、社員として雇用されているレスラーと、フリーランスとして契約しているレスラーは扱いが違う。そして、労働者は労働法などで守られ、非労働者は守られない。ただ、働き方の多様化により、中間的な存在が出てきている。これはウーバーイーツで働く人をどう捉えるかという話ともつながる。

「社員」ではないのにもかかわらず、指揮命令系統下におかれており、極めて労働者性が高い存在となっていることがある。「社員」ではないレスラーなどはまさにそうだ。どこまで守ることができるのかという論点を含んでいる。

木村花選手が社員として雇用されていたかどうかはわからない。ただ、これはプロレスラーに限らずタレントと事務所の関係ともいえる。マネジメント契約しているのにもかかわらず、過剰な指示を出し、結局、尊厳や命を守れないのであれば、契約する意味が薄い。社員だったとしたら、なおさら守らなくてはならなかったはずだ。