現在スーパーに勤務する風間詩織さんは、もともと料理本の編集者。その後居酒屋チェーンの会社に転職。居酒屋休業をせざるを得ない現在は、会社が斡旋したスーパーで勤務している2児の母だ。スーパーでホットケーキミックスや小麦粉は品切れ、バターも入手困難なのも目の当たりにしている。

そこで風間さんが「スーパーで入手しやすく安いもので作る簡単レシピ」を考えるべく、ヘルプを頼んだのは、人気料理家の飛田和緒さん。『常備菜』では料理本大賞を受賞し、コロナ自粛の今、電子書籍として買ってすぐスマホで読めるオリジナルレシピブック『わが家の定番 家族ごはん』も3冊刊行したばかりだ。前回の食パンのアレンジに続き、入手しやすく安値で身体にいい食材、ヨーグルトにクローズアップ。「ある材料で美味しくつくる」天才の飛田さんが教えてくれた代用レシピとは。

「レシピに忠実」なお客様

外出自粛で大忙しのスーパーの仕事を、休業中の勤務先からの斡旋で始めて、早2ヵ月。担当の品出しにもだいぶ慣れ、お客さまからの質問にも、ほぼ答えられるようになってきた中で、お客さまには、買う物を決めてくる方とそうでない方がいらっしゃると気づきました。

決めずに来られる方は、平台と呼ばれる「売りだし強化アイテム」が並ぶ台で足をとめ、冷凍食品のケースも端から端までじっくりと見比べる、値引きシールのついた商品も手に取ってくださりやすいなどの、特徴があります。

対して前者の「買う物を決めてくる方」は、滞在時間が短い。牛乳や卵のように、選択肢がたくさんあっても、迷うことなくかごに入れ、必要な売り場を回ったら、すぐにレジへ向かいます。新型コロナ感染予防対策中の現在では、理想的な買い物スタイルです。そして、私たちスタッフに質問されるお客さまは、圧倒的に前者が多いのです。

レシピに乗っていた食材が売ってなかったときにどうするか…Photo by Getty Images

先日、ズッキーニと乾燥パスタ、ホールトマト缶をかごに入れた外国の方が、高級チーズ売り場で途方に暮れているのを見掛け、「何かお探しですか?」と訊ねると、「マスカルポーネチーズを探している」と言います。ああ、マスカルポーネ。コロナの影響で、現在入荷なしアイテムの一つです。

そう伝え、何に使うつもりだったのかと聞くと、「ティラミスを作る」。
それなら、「代わりにサワークリームはどうか」「クリームチーズと生クリームを混ぜてみたら」「ヨーグルトと生クリームではどうか」と提案してみましたが、納得がいかない様子。結局、デザート用チーズは買わずに、レジへと向かいました。彼は、「マスカルポーネ」を買おうと決めてきたのです。

また、別の日、「無塩バターありませんか?」と聞かれ、バター&マーガリン売り場にお連れすると、品薄状態のバターはあったものの、それは有塩。「無塩じゃないと……」と手を出しません。でも今の時期、バターがあっただけでも幸運。無塩なんて、いつ入ることやら。

「失礼ですが、何にお使いですか?」と聞くと、手書きのケーキのレシピを見せてくれ、「無塩って、なっていて……」。どれどれとのぞきこんでみたら、無塩バターの下に、「塩 適宜」と書いてある!

「ここに塩ってあるから、有塩バターを使って、材料の塩を抜いたらどうでしょう?」

「あ、そういわれれば!」と、無塩バターを有塩バターに変更して、買って行かれました。

こうしたやりとりは、かつて、料理本を作っていた頃のことを思い出させました。レシピの中に、手に入れづらいものがあった時、どう書くのか。読者は、「本物が知りたいのか」「手に入る材料に代えたレシピを知りたいのか」、毎回料理の先生と、話し合ったものです。

私自身は、「ペクチン」とあっても、勝手に抜いて、さらさらのシロップみたいなジャムでもよしとしたり、全粒粉と書いてあっても、安い「小麦ふすま」を買って、薄力粉に混ぜて使うなど、アレンジしまくっていたため、たとえ手に入らなくても、本来の材料を知りたいのではないかと考えていました。が、スーパーに立ち、お客さまを見ている限り、多くの方はレシピに対して、もっとずっと謙虚なのです。レシピにある通りに作ろうと、必死に材料を探される姿に、レシピには「作ろうと思ったら、必ず手に入ること」が大事だと、思い直しました。