日本でも多数出現…「自粛警察」の心理を理解できますか?

「正義」はこうして暴走する
原田 隆之 プロフィール

なぜ人は同調するか

なぜ人は、このように一見不合理ともいえる行動を取るのだろうか。

1つは、先述のように集団から疎外されることが、生存において危険だからである。目の前の些細なことに同調して済むのであれば、同調しておいたほうがよほど得だという場合がある。実験の例で言えば、線が長いかどうかは所詮どうでもいいことで、集団のなかで異端視されたり排除されたりすることのほうが危険だと感じられるのである。

また、人間は進化の過程で、集団に是認されることに快を感じる生理学的メカニズムを身に付けてきている。逆に言うと、そのようなメカニズムを有した者が生存競争の中で生き残り、われわれの祖先となったのだともいえる。たとえば、脳内の腹側線条体という部位は、社会的是認を受けたときに興奮することが知られており、ここは別名快感回路と呼ばれている。

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さらに、特に同調しやすい人の特徴として挙げられるのは、自分の判断力に自信が持てず、周囲に判断をゆだねるような傾向である。線分の長短のようなものですら、自律的に判断することが難しいのであれば、もっと複雑な世の中での意思決定には多大な知的労力が必要となる。

行動経済学では、人はこのような場面で、往々にして「知的手抜き」をして、手っ取り早い意思決定をすると言われている。多数意見に従う、周りの言う通りにするというのがその最たるものである。このようにして、か弱い個人は、集団に是認されることで生をつなぐのである。

同調しない場合はどうなるか。これは集団から大なり小なり、さまざまな「罰」を受けることになる。法律に同調しない場合の刑罰が最たるものであるし、インフォーマルグループの場合は、疎外や排除という罰を受ける場合がある。