日本でも多数出現…「自粛警察」の心理を理解できますか?

「正義」はこうして暴走する
原田 隆之 プロフィール

斉一性への圧力

日本人は集団主義的で同調圧力の高い国民性を有しているということは、昔からよく言われている。

よく知られた外国のジョークで、転覆しかけた船から海へ飛び込むのをためらう人に対し、アメリカ人なら「ヒーローになれますよ」、イギリス人なら「紳士ならそうすべきですよ」と言うと効果的であるとされ、日本人には「みんなそうしていますよ」と言うのがよいのだそうだ。

日本文化はまた、「恥の文化」とも言われる。内的な倫理基準で物事を自律的に判断し、行動の是非を決めるのではなく、「そうしないと恥ずかしい」と人の目を気にして、いわば外的な倫理基準で行動の善悪を判断する。これもまた、集団主義的で、同調圧力に基づく行動規範であるといえる。

心理学の用語では、このような集団内の見えざる力を「斉一性への圧力」と呼ぶ。社会的動物である人間は、一人では生きていくことができない。そのため、集団(社会)を作って生きていくわけであるが、その際個人的利益と集団的利益が相反することもある。

個人的利益ばかりを追求していれば、集団が危機に瀕してしまうことがあるため、人々は集団規範を作り、それに同調するような圧力が生じるわけである。集団規範は明文化されている場合もあれば(例:法律)、そうでない場合もある(例:慣習)。

 

心理学の古典的な実験で、ソロモン・アッシュの同調実験がある。実験ではまず、数名からなる実験参加者のグループに2枚のカードを見せる。最初の1枚のカードには1本の線分が書かれている。そして、2枚目のカードには長さの違う複数の線分が書かれており、そこから最初の1本の線分と同じ長さの線分を選ぶという単純な課題である。

しかし、グループ内の1人だけが本当の被験者であり、残りはサクラで、サクラたちはわざと間違った答えをするように指示されている。すると、真の実験参加者は、戸惑いながらもサクラの答えに同調して間違った回答をしてしまうのである。