医療従事者のコロナ禍の悩みは複雑、
単純には解決できない

また、先に話したNYのケースと同じように、医療従事者への称賛に居心地の悪い思いをしている医療者は日本にもいる。最前線の医師のヒーローとしてのつらさもあるが、今回のコロナ禍では、患者数が減って通常の治療を思うようにできない医師も少なくない。

私たち一般人は医療現場の体制や現状を学ぶことはない。そのため間違った思い込みが生じているように感じた。まず、コロナ禍であっても、すべての病院がコロナ患者を受けているわけではなく、受け入れている病院であっても、すべての医療者がコロナ対策に当たっているわけではない、ということだ。

コロナ患者を受け入れなくても院内感染予防のため診療や治療を制限したり、患者もちょっとした症状なら診療を控えるため、個人病院の医師などは患者数も収入も激減しているケースも多い。医師は患者を診たい気持ちはあっても患者が来ない。そんな歯がゆい思いに駆られている医療者が、「ありがとう」とお礼を言われてしまえば、やはり居心地が悪いことだろう。

医師の悩みもさまざまだ。(本文と人物は関係ありません)photo/Getty Images

「手が空いているなら新型コロナの診療に参加すれば」という一般の意見もある。しかし、医療現場はそんな単純にはできてない。違う専門の医療者にできることは限られるし、他の病院へ出向くことで感染リスクを広げる危険もある。

これらはとても怖いことだ。必要な医療機関(介護施設も!)の多くが倒産で閉鎖されてしまったら。平常な生活が戻り、受診を控えていた病院にやっと行けると思っていたのに、病院がなくなっていた、なんて笑い話にもならない。新型コロナの治療も重要だが、がんを含め、慢性疾患、救急医療など、医療や介護を必要とする患者さんもたくさんいる。そういった患者さんがかかる病院を守らなければ、本当の医療崩壊になってしまわないか。

だからこそ、いま彼らが何に悩んでいるのかを整理することが必要だと思うのだ。最前線で感染の恐怖と過重労働に奮闘する悩み、差別されるという悩み、患者を診られないという悩み、経営ができないという悩み、そして、過剰に称賛されるという悩み、悩みの形態は違うが、どれも大きな負担であろう。