ヒーローになった医療従事者のつらさもある

NYの医療現場でサポート活動をするTさんは、先日のオンラインミーティングで、気になっていることを教えてくれた。彼女は普段、患者さんの思いを聞くことが多いが、コロナ禍で医療者の「愚痴」、「心の叫び」を聞くことが増えたというのだ。

Tさんは、
市民から医療者へ、ヒーローのような扱いで大々的な称賛を受けることをプレッシャーに感じる人が増えているんです。心身ともに限界で、本当は逃げ出したい、泣きたいと思っても、周りから期待され、称えられるほど、引くに引けなくなる。泣き言さえも発することができなくなるのがつらい。そして、亡くなっていく患者さんを前に期待に応えられなかった、無力感に襲われるという人が多くなっています」と語ってくれた。

ライフコーチでもある愛子さんも今回のコロナ禍で、NY市民の医療従事者への熱い思いを、プレッシャーに感じる人もいるかもしれないと話す。

「泣くことも頼ることもせず、仮面ライダーのように“一人で戦うヒーロー”としてふるまうことを求められてしまう。この状況は、心身が限界のなかで、追いつめられる要因となってしまいます。コロナの前、医療者はヒーローではなく、ヒーラーでありエンジェルと称賛されていたはずです」

実際にNYでは、高級ホテルがコロナ治療の最前線に当たる医療者に無料宿泊を提供したり、同じ曜日の同時刻に、NYの多くの地域で医療者をたたえる拍手が起こったり、感謝のライトアップがされたのを、映像で見た。素晴らしいパフォーマンスだと思ったし、さすがニューヨークと感動した人は少なくない。それを受け取った医療者は誇らしく思い、励みにする人もたくさんいる一方で、市民の称賛をプレッシャーに感じる医療者もいたのだ。

この話から感謝を伝えることや応援して支えることと、ヒーローとして称賛することは、似ているようで違うことに気づかされる。これは「ぎりぎり頑張っているがん患者に、頑張ってと言ってはいけない」というのに、似ていると思った。

5月19日、NYのランゴンヘルス病院でも医療者をたたえ、拍手喝采が起きた。各地で起きている。photo/Getty Images