オンラインならではのコミュニケーション

この「劇的欲求→葛藤→解決」のプロセスで流れていく授業は、ぼくひとりで進行しているわけではありません。

考えるなかで、ヒントを与えたり、問いを生み出すアクセントになるのが「天の声」です。
「でもさぁ、それだったら子育てできるだけの子どもを産めばいいよね?」などと、少しばかり子どもたちがハッとするような一言、「声」を降らせます。

また、この間、クラスのなかで小グループに分かれることがあります。例えば、定員100人の授業なら30数人ずつ、30人なら10人ずつに分かれます。グループで意見交換します。その際。グループにはスタッフが一人ずつ、子どもたちに寄り添う「メンター」としてサポートします。
どうしたらいいか、ひとりで考えを巡らせている子を見つけては促す、声をかけるなど、一人ひとりの子どもたちが参加しやすい環境をつくっていきます。

森田さんの授業のあとに「メンター」である別のスタッフが「放課後」を担当。ディスコードというSNSで子どもたちが交流できる 写真提供/探究学舎

この天の声やメンター役は、コロナ以前の「対面式」授業で実践していたことを発展させたものです。スタッフとは、模擬授業を何度も行い、シミュレーションして練り上げていきます。ただし、授業はライブであり、想定外の子どもの反応やさまざまなことが起きます。そこに各々のスタッフが経験から生み出される当意即妙なリアクションを生かして授業をクリエイトするのです。授業の規模によりますが、メンターは一回の授業に3~6人つきます。

これを、オンラインで毎日行っています。配信中の授業風景を見ると、ぼくのように前に立ってしゃべっているのはメインファシリテーターですが、実は、大勢のスタッフによって支えられています。

したがって、パソコンを通した授業でも、子どもたちは決して孤独ではないはずです。いくつもの目で子どもたちを見守る。驚きと感動を引き出すお手伝いをする。そんなスタッフのチームプレーが、オンラインでありながら圧倒的な双方向性を保つ秘訣なのです。

加えて、スタッフは、子どもたちの放課後にも付き合います。授業の後に20~30分のホームルームを設け、さらに「ディスコード」という子ども同士でコミュニケーションできるSNSでコミュニティーを提供しています。

このディスコードを開くと、日本中、いえ、世界中から子どもたちが持ち寄った画像や動画が出てきます。授業のあと「クエスト」と呼ばれる自由課題を出すのですが、これに関するものを、みんなで情報交換するのです。

イワシの授業のあとは、稚魚である「ちりめんじゃこから様々な海洋生物の子どもたちを探してみよう」という課題を出しました。カタクチイワシ、シロウオ、イカナゴなどイワシ類のなかに、太刀魚やカニ、イカ、タコ、タツノオトシゴまで見つけた子がいました。

これはやってもいいし、やらなくてもよい自由な取り組みです。でも、ディスコードで会ったこともない遠くにいる全国の友達、海外に住む世界の子どもたちとつながれる。これは日常では味わえない貴重な経験です。