落語家の家に生まれた柳亭小痴楽さんにとって、日本茶は子供の頃から日常にあり、噺家となった今では切っても切れない馴染み深いもの。お茶から“間”を学んだ前座時代や現在のお茶ライフについて伺いました。

たかがお茶一杯だけど、
人間性が見えてしまうんです

落語の世界では、“前座”と呼ばれる噺家の卵たちの仕事のひとつに、師匠方へのお茶出しがある。

「僕は親父が噺家だったもので、それこそ子供の頃からお茶を淹れさせられてました。前座代わりです(笑)。前座時代は、まず師匠方がいらっしゃったらお茶を出す。着物に着替え終わったらお茶を出す。高座が終わったらお茶を出す。最低でも一人につき一日3回はお茶を淹れていました

師匠ごとに薄めがいいや濃いめがいい、ぬるいのが好きな人もいれば冷たいのがいい人もいる。最初に師匠方のお茶の好みを勉強するのが仕事でした。ぬるめがいいからといって、濃いめに出したお茶に水を足して薄めるとすぐにバレるし怒られる(笑)。お湯を湯呑みから湯呑みに移し替えて、冷まして……そのひと手間を惜しまず丁寧に。

前座の間はお茶一つで落語家としての人間性が浮き彫りになる。お茶を出すタイミングにしても、師匠方が話している間に出してしまうと会話の流れを止めてしまうことになるでしょう。“間”のセンスがないって話になります。ベストのタイミングは、師匠が腰を下ろして、ホッと一息ついた時に湯呑みを渡す。師匠方は言葉では誉めてくださらないんですが、タイミングや味や温度のすべてがうまくいったときだけ、一口飲んだときにニコッと目を合わせてくださる。そういうところがおもしろかったし、嬉しかったですね」