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仮想通貨「元・億り人」を次々に襲う「人生棒に振るほどの重税」

シングルマザーの悲惨な告白

密かに国税当局が新たなターゲットを定めていた。対象は、暗号資産で荒稼ぎし、成り上がろうとした「元・億り人」たち。国税当局はいかにして、その網を狭めているのか。最新動向をリポートする。

きっかけは60万円の投資

「国税局から指摘された'18年度分の所得の申告漏れ額は約5300万円でした。追徴税額は加算税などを含めて、約3000万円。私の今の年収は300万円ほどですから、一生かかっても完納は不可能です。

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毎月わずかずつでも納めるつもりですが、多少残してあった暗号資産も、すでに換金して、息子の学費や自分の引っ越し費用の支払いに充てたので、今ではほとんど残っていません。国税庁が暗号資産の課税ルールを公表した'17年12月に気づいていれば、これほど大変な状況に追い込まれることはなかったのですが……」

こう肩を落とすのは、東海地方で暮らす樋口沙織さん(仮名)。40代前半のシングルマザーだ。

'08年公開の大ヒット映画『おくりびと』。このタイトルをもじって「億り人」と呼ばれた人たちがいる。'17年末までにインターネット上で流通する仮想通貨('19年3月以降の名称は暗号資産)を購入して、1億円を大幅に上回る利益を手にした一般投資家たちだ。

暗号資産は代表的な「ビットコイン」の運用が'09年に始まり、円やドルなどの法定通貨と交換する業者=取引所が登場したことで、「イーサリアム」など派生の暗号資産も次々と誕生した。

国税庁によると、暗号資産全体の価格が急騰した'17年の1年間で、暗号資産に投資して1億円以上の収入を得た人は、税務申告したケースだけで331人に上る。もちろんこれは氷山の一角で、雨後の筍の如く生まれ出た「億り人」に羨望の眼差しが向けられたことは、今も記憶に新しい。

 

ところがその「億り人」の大半が今、大変な苦境に直面している。国税庁が'17年12月に突然公表した課税ルールによって、巨額の納税義務が発生したからだ。

暗号資産の価格が'18年初頭から短期間に大暴落して、億単位の「含み益(株式などを取得したときよりも価格が上昇したことによって発生する、潜在的な利益のこと)」が瞬く間に吹き飛んだため、ほとんどの人は「億り人」の時代に負った巨額の税金など到底納められない事態に陥ったのだ。

自らを「戻り人」や「瞬間億り人」などと自虐的に呼ばざるを得ない、彼らの実情を追った。