性暴力の被害者が、驚くほど「自分を責めてしまう」理由

自傷行為に走ってしまう人もいる…
小川 たまか プロフィール

信頼していた相手から被害にあったときの混乱

齋藤さんは、被害者が自責しやすい理由は下記の3点にあると説明する。

(1)性被害の場合、規範意識から「同化」が起きやすい。
(2)人に話せないことが自責につながる。
(3)犯罪と日常の区別がつきづらい。

(1)について、この場合の規範意識とは「知らない人について行ってはいけない」「お酒を飲んでハメをはずしたら襲われても仕方ない」「派手な格好をする女性ははしたない」といった規範意識のこと。現代の日本ではこうした規範意識が個人の社会や自分のとらえ方に影響しており、このような規範意識を持つ人ほど被害に遭った際に自責しやすい。

(2)に関しては、たとえば「今日、恋人とセックスした」と親に報告したことがあるという人は少数派だろう。性に関しては、たとえ相思相愛のカップルの同意の行為であっても人に話しづらい。

「性暴力は「暴力」であるにも関わらず、性に関わるので、人に話してはいけないことのように思ってしまうことがあります。特に子どもの場合、人に話してはいけないことをした=自分が悪いことをした、という心理に陥ることがあります」(齋藤さん)

また(3)について、齋藤さんは次のように説明する。

「通常、身体的な暴力ならば、暴力を振るったほうが悪いと理解しやすい。しかし性暴力は、それを暴力だと思えない場合が多い。特に、相手が信頼している人など知り合いだった場合がそうです。相手が悪いと思えないから自分が悪い、になる」

知人や顔見知りからの性被害の場合も、加害者から「君が誘ったんだよ」「君もその気だったはずだ」と言われることがある。被害者は、被害後も変わりなく接してくる加害者を見て混乱し、「傷つく自分がおかしいのだ」あるいは「関係を受け入れてしまったほうが楽だ」と考えてしまうことがある。

 

被害者を自責に追い込む罠

齋藤さんによれば、「暴力や脅しの伴う性暴力の場合も自分を責める被害者は多いが、分かりやすい暴力を振るわれているので、被害者本人も理不尽さを認識することがある」という。

これはわかりやすい。殴られたり脅されたりすれば、被害者本人も理不尽さを認識しやすい。しかし一方で、そうでない場合、被害者は「なぜ逃げなかったのか」と自分を責めるし、同様のことを周囲からも言われやすい。さらに最近では知られてきた通り、暴行や脅迫を伴わなければ、たとえ同意がなくても現場では強制性交等罪(旧・強姦罪)には問えない。