外資系航空会社で働くと
日系には戻れない

そもそも日本人は文化として「働き過ぎ」らしい。与えられたことを120%やり遂げようとして労働時間が長くなる傾向にもある。「お客様は神様」文化が浸透し切っているため、どんな要望にも無料で応えようとする傾向にもある。以前、米国出張の際にロサンゼルス→ニューヨークの国内線に乗り遅れたことがある。車の渋滞に巻き込まれて予約の時間を大幅に過ぎ、チケットを取っていた米系航空に電話したけど、人として扱われなかった。そのため、同じスターアライアンスグループの本邦ANAに電話したら、カウンターの日本人の方があちこち走り回って対応してくださった。

同じスターアライアンスグループとは言え、本来ANAは関係ないはずである。それでも何とか助けようと走り回ってくれた姿に心の底から感謝したが、あとで振り返ると彼女の労働力を必要以上に搾取してしまったかもしれないと感じた。

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日本人、特にサービス業に携わる日本人はやれる事は全力で120%やり切ろうと頑張ってくれる人が多い。その姿勢は株主からすると100点満点だが、少子高齢化で働き手が急減する社会では成り立たない。そもそも120%の仕事をこなしてきたのに、更に足りなくなった人手分を埋めるなんて不可能なのだ。

航空会社の客室乗務員が「一度外資系(特に欧米系)で働くと日系には戻れない」なんて声をよく聞く。主な理由は「過剰サービス」だ。外資系CAにはそこまでのサービスを求めない我々日本人も、相手が日本人となると「このぐらいやってくれて当たり前だろう」とサービスレベルへの期待値が上がったりするし、航空会社の方も「おもてなし」を全力で提供しようとするから、知らず知らずのうちに労働者への負担は大きくなる。また「文句を言わずに言われたことをやるべき」といった精神論も根強い市民権を得ているため、ついつい日本人は「働きバチ」となってしまう。

2013年、ブエノスアイレスで開催された東京五輪招致委員会にて。「お・も・て・な・し」で見事に聴衆をひきつけた滝沢クリステルさんも、客室乗務員のようなファッション。ある意味で日本の客室乗務員のサービスの素晴らしさが国際的に認知されているということでもあるのではないだろうか。そしてその素晴らしさを「当然」と思ってしまう人もいるのではないだろうか Photo by Getty Images

それは一般的なデスクワークでも同じだ。私は過去に何度か転職し、いずれも外資系金融機関の「日本支社」で働いてきたが、過去につとめた外資系投資銀行では一番長くオフィスが稼働しているのは日本だった。次が米国で最後は欧州。特にフランス人は「働かない時間」を大切にしている人が多かった。

つまり、日本人は元々「労働」に人生を捧げることに慣れていて、時間も頑張りも120%で挑んできた。そんな私たちには、人手不足による更なる労働を担うエネルギーも余力も残されていないのである。