私たちの体の大部分を占める粒子「ハドロン」の秘密を平易に教えます

物理を学ぶために「必要なこと」とは?
ならじょToday プロフィール

では、これがハドロンの場合はどうなるでしょう。

ハドロンというものは半減期が非常に短く、作ってもすぐに崩壊して他の物質になるため、自然界に存在するハドロンは、ほんの数種類です。

 

実験室でハドロンを扱うためには、人工的に高エネルギーの粒子をぶつけるなどしてハドロンを作るわけですが、すぐに崩壊してなくなってしまいます。

したがって、ハドロンの性質を理解するためには、ハドロン自身を観測するのではなく、時には崩壊していく粒子の痕跡をたどっていかなければなりません。

具体的には、たとえば安定している粒子(標的)に別の粒子をぶつけます。このエネルギーを横軸にとり、衝突が起こった後に崩壊してくる粒子の数を縦軸にとった図を見ると、先ほどのブランコの例に挙げられたように山ができることがあります。

その山には必ず何かがあるはずなので、それをハドロンができた痕跡であるとします。これをハドロン共鳴と呼ぶのです。

スイス・ジュネーヴ郊外に位置するCERNの大型ハドロン衝突機 Photo by Getty Images

実際には、そこからさらに実験を繰り返し、その「山」の原因が非常に短寿命の物体いわゆるハドロンが存在するためなのか、何か外部からの作用によるものであるか、それともただの物体の相互作用による偶然の現象なのか、ということを突き止めていきます。

このような現象は非常に多数の、異なる種類の実験で確認されますが、すべての現象が完全に理解されているわけではありません。ですから、これら1つ1つの現象を理解し、すべての現象をできるだけ統一的に理解していくことが、ハドロン物理の目標の1つです。

さまざまな粒子の痕跡を1つ1つ理解していく Photo by Vidsplay from StockSnap

――先生の日々の研究の流れについて教えてください。

たとえば、これまでの仮説が正しいか否かの検証をするために、原子核の中にハドロンを入れたらどうなるかを予想して計算します。実験がなされれば、その結果を受けて、そこから考えられる性質や事象なども調べます。

現在の私は、ハドロンの性質を見る方法として、以下の3つについて研究しています。

1つ目は「生成実験」。安定した粒子に別の粒子をぶつけて、目当てのハドロンが生成される過程を研究するというものです。

2つ目の方法は「崩壊実験」。不安定なハドロンがどのような粒子に崩壊していくかを研究するものです。

3つ目は、異なる環境を与えて、どのような応答があるかを研究する方法。

私の研究は、「ある仮説」に対して、「どのような実験でそれを確認することができるか」を考えることが一連の流れです。また、そのような実験は、非常に大きな加速器を用いるので、他大学や他の研究機関と共同研究などの形で研究をしています。