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科学作家が絶品ラーメンの味を「わかり合える」理由を真摯に考えた

快著『理系の文章術』まえがき全文公開
好評連載「一番簡単な進化の講義」でおなじみベストセラー科学作家・更科功氏が、そのノウハウを惜しみなく紹介した新刊『理系の文章術』が発売されました。本記事では刊行を記念して同書の「はじめに」を全文公開いたします!

ラーメン情報がメディアに出ている理由

「俺は自分の舌しか信じない」と彼は言った。

彼はラーメンが大好きで、しょっちゅうラーメン屋でラーメンを食べていた。そして、いつも美味(おい)しいラーメン屋を探していた。でも彼は、雑誌やインターネットの情報を信用しない。実際に自分でラーメン屋に行って、自分の舌で美味しいか不味(まず)いかを判断するのだ。彼に言わせれば、雑誌やインターネットの情報なんか、当てにならないそうだ。

彼の生き方は立派である。人の意見に左右されず、信念を持って生きるなんて、誰にでもできることではない。そして、彼のような生き方をしている人には、本書は必要ないだろう。本書は、彼のような信念を持っていない人のために、書かれた本だからだ。

 

ラーメンを食べて、美味しいか不味いかを言うだけなら、誰にでもできる。でも、なぜ美味しいのか、あるいは、なぜ不味いのか、その理由を説明することは、誰にでもできることではない。そして、その理由の中には、多くの人が共感してくれるものもあるだろう。

つまり、ラーメンが美味しいか不味いかには、何らかの一般性があるはずだ。

一般性があるから、つまり他の人ともわかり合える共通性があるから、雑誌やインターネットにラーメン屋の情報があるのだ。もしも、まったく一般性がなかったら、ラーメン屋の情報なんか読んだって、何の役にも立たない。ラーメンの味について、他の人とわかり合えることなんて、何一つないことになるからだ。

この美味しさ、わかり合う方法はある Photo by iStock

もちろん、人には好みというものがある。ある人には美味しいラーメンが、別の人には不味いということもあるだろう。しかし、そうであっても、ラーメンの味にまったく一般性がないことはないはずだ。(すべての人ではなくても)多くの人が共通して美味しいと感じるラーメンは存在するからだ。

文章も同じだろう。きっと、わかりやすい文章とか論理的な文章には、何らかの一般性がある。そして一般性があれば、それは人に伝えることができるはずだ。しかも、その一般性は、短い時間で簡単に伝えることができると私は思う。

勉強しないでも国語はできてしまう理由

たくさん勉強すれば、成績はよくなるかもしれない。でも、あまり勉強しなくても、よい成績が取れることもある。高校の科目の中で、そういう人が一番多いのは国語(古文や漢文は除く)だろう。

もちろん、国語が苦手な人もいる。そんな友人の一人が、こんなことを言っていた。