「最近耳を気にするんです。痒がってよく首を振っていて……」

「耳のトラブルは初めてですか?」

「いえ、小さい頃から時々外耳炎になります」

「季節性はありますか? 例えば、梅雨時にじめじめしてくると痒がるとか、冬の間はわりと調子がいいとか」

「あ、そうですね。大体いつもこのくらいの梅雨時に悪くなるかも」

だんだんと気温が上がり、梅雨が近づいてくると、こういった耳や皮膚にトラブルを抱えた犬の来院が増える。あまりぴんとこないペットオーナーも多いかもしれないが、特に犬では皮膚病はメジャーな病気なのだ。

目に見えて毛が抜けるなどのことがなくても、実は皮膚疾患と言うケースも…Photo by iStock
獣医師で作家の片川優子さんによる連載「ペットと生きるために大切なこと」。コロナ禍でも、人間も動物も病気になる。特に梅雨の時期に増加するのが犬の皮膚疾患だという。コロナ禍でどんな状況のときに病院に行くべきかをきちんと認識しなければならない今、飼い主としてどのような点に注意すればいいのだろうか。

意外と多い皮膚科疾患

アニコムの調べによると、保険請求をした犬のうち、1番多い病気は皮膚科疾患だそうだ文献1
犬の診療費の請求理由TOP20の中でも、1位の原因不明の外耳炎を筆頭に、5位(原因不明の皮膚炎)、6位(膿皮症/細菌性皮膚炎)、8位(アレルギー性皮膚炎)、9位(アトピー性皮膚炎)、14位(細菌性外耳炎)と数多くランクインしている。

皮膚は体の中で1番大きな臓器である。また肝臓や腎臓など、体の中にある臓器と違い、皮膚は飼い主にとって状態が確認できる唯一の臓器であるとも言える。長く病院に通っても治らない皮膚トラブルに悩み、病院を変えたりあきらめたりしてしまった飼い主も決して少なくないだろう。

しかしその愛犬の皮膚トラブルは、そもそも治るものなのだろうか? トラブルの原因は様々だが、例えばもしそれがアトピーなどのように、その子の体質によるものだとしたら、治らない可能性が高い。

人間で言うところの花粉症を思い浮かべて欲しい。花粉が飛ぶ時期につらくなり、病院に通院する方も多いだろうが、目的は「症状の緩和」であり、「花粉症を治してほしい」と期待して病院へ行く人はそう多くないだろう。それは、「花粉症は体質であり、治るようなものではない」という認識がある人が大多数だからだと思う。

犬のアトピー性皮膚炎といった皮膚トラブルも、花粉症と同様、「治す」のは非常に難しい。しかし、そういった説明がなされず、かゆみ止めと抗生剤を処方され続けてもう何年も薬を飲ませ続けているという方も少なくは無いのではないだろうか。
今回はそんな意外と奥の深い皮膚トラブルについて詳しく見ていきたいと思う。