作品:中上清

ニック・ランド『暗黒の啓蒙書』への「入口」

民主制からの「出口」を目指して
遂に刊行を迎えたニック・ランド『暗黒の啓蒙書』。早くも話題沸騰のなか、本日は本書所収の木澤佐登志氏による「序文」を特別公開。暗黒面への「入口」はここにある!

ニック・ランドとは何者か

ニック・ランドとは一体何者か。

資本の絶えざる脱領土化を推し進めることで資本主義の内破を目指す「加速主義」の提唱者? CCRUでの活動を通じてその後の「思弁的転回」に通じる哲学的な地下水脈を90年代の時点で醸成していた影のフィクサー? ニーチェ主義にかぶれたリバタリアン? 新反動主義者とツルみながら優生学的な人種思想すら肯定する白人至上主義者? 

おそらく、そのどれでもあり、かつそのどれでもない、とさしあたりは言っておこう。

ともあれ、いささか先走りすぎた。ひとまず、ニック・ランドのプロフィールを簡単に確認しておくことから始めよう。

ニック・ランドは1963年、英国に生まれている。

フランスの思想家ジョルジュ・バタイユの研究でアカデミックなキャリアをスタートさせた彼は、1987年にウォーリック大学に講師として着任。そこでは主に大陸哲学の授業を担当し、以降アカデミシャンとしてのランドの生活は、彼がウォーリック大学を辞任する1998年まで続くこととなる。

1992年には彼のバタイユ研究の成果と言える初めての単著『絶滅への渇き(The Thirst for Annihilation: Georges Bataille and Virulent Nihilism)』が刊行されている。

 

伝説のユニット「CCRU」

アカデミズム期におけるランドにとっての一つの転機は1995年に訪れる。

この年、ランドは同僚で公私ともにパートナーであったサディ・プラント(Sadie Plant)とともにサイバネティック文化研究ユニット(Cybernetic Culture Research Unit: CCRU)をウォーリック大学哲学部の内部に設立した。

この、学生主体でかつ非公式の集団は、大陸哲学、ポスト構造主義(ドゥルーズ+ガタリ)、サイバネティクス、サイエンス・フィクション、レイヴ・カルチャー、オカルティズム、等々、といった広範なジャンルを学際的に踏破する特異な思索を暗号的かつ秘教的なテクストとともに生成していき、かつその中心には常にカリスマ的な導師(グル)としてのランドの姿があった。