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「知識がない人間は政治に口出しするな」という批判の怪しさと危うさ

自分の首を絞めることになる

検察庁法改正が大きく話題になるなか、芸能人らによる政治的な発言も増えている。これに対して「知識がないのに政治に口を出すな」という批判も聞かれるが、果たしてどう考えるべきなのか。『デモクラシーの論じ方』などの著書がある政治学者の杉田敦氏が歴史にヒントを探る。

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芸能人は判断力がない?

芸能人などがツイッターで政府の方針に批判的な発信をしたのをきっかけに、「知識がないのに政治に口を出すべきではない」といった議論がネット上で起きているようです。しかし、これは奇妙な議論です。ツイッターなどで発言した方々はいずれも選挙権をお持ちのようで、選挙権を持つということは政治的な発言権を公的に認定されているということですから、その方々が政治的な発言をしてはならないというのは端的に間違っています。以上終わり。

としてもいいのですが、もう少し詳しく考えてみましょう。

そもそも、芸能人の方々に政治的な「知識がない」という認定はどのようになされたのでしょうか。芸能事務所に所属すると選挙権を失う制度があるとは、寡聞にして聞いたことがありません。ある種の人々は別の人々よりも、その属性からして政治的な判断力がないと当然に判断できる、ということでしょうか。

 

実際、昔はそのような考え方が支配的でした。市民革命以前には、議会は貴族や司祭のような特権的な人々の声だけを代表するものとされ、一般の人々が政治的な意見をもったり発言したりすることなどありえませんでした。

市民革命後、議会が国民を代表する機関になり、選挙が行われるようになっても、長い間、財産資格が制度化されていました。政府に多額の固定資産税を納めているような人々だけに選挙権は与えられたのです。

その理由は、17世紀イギリスで起きたピューリタン革命時に普通選挙導入に反対したクロムウェルの主張によれば、土地を持たないような人々は国が他国に征服されても痛痒を感じないので無責任な政治的判断しかできない、からでした。財産資格は日本を含めて、1920年代まで維持されました。