コロナによる価値観の「揺り戻し」

ここで私が何より残念なのは、ジェンダーや人種を含め、ダイバーシティ(多様性)の受容が世界で前向きに進んでいた中で、感染拡大と共に「男性=仕事、女性=家事育児」といった古い価値観が再び強まってしまっている点だ。

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例えば、私が出席している国際学会でも、近年はダイバーシティに関する特別セッションが積極的に開かれ、性別や人種によって偏りのある就職率や研究費の取得率などを公平にするにはどうすべきか、ハラスメントを防ぐにはどのような対策が必要かといったさまざまな議題で活発な議論が行われていた。

私の働くオーストリアでは、国の運営する研究費の申請にあたり、年齢、性別、人種、キャリア年数などさまざまな要素に対する過去の取得率とその推移が資料として公表されるなど、透明性を重視した対策もなされていた。

しかし同時に、欧米を中心に、一時的にポピュリズム(大衆迎合主義)が支持を集め、それに伴い有色人種への差別意識が強まった地域があるなど、人種や性別などあらゆる差別が世界のどの地域にも未だに根強く残っているという現実がある。だからこそ、上記のようなさまざまな対策が世界中で行われていたのである。