出口治明氏

出口治明が語った、コロナ時代には「人生設計より適応力が重要」なワケ

楽しい人生を送るための「底力」とは

「人生100年時代」といわれる昨今ですが、メディアが予想する高齢化社会には、いつも不安なイメージがつきまといます。加えて、今回の新型コロナによる混乱で、先行きはますます不透明になっています。

でも、こんな不透明な時代だからこそ、自分の人生をゆっくりと考えてみたいもの。

60歳でライフネット生命を立ち上げ、70歳から立命館アジア太平洋大学(APU)の学長として働く出口治明さんに、コロナの時代の生き方や人生に必要な力とは何か? というテーマでお話を伺いました。世界各国1200の都市を旅し、1万冊以上の本を読破してきた出口さんは、最新刊『還暦からの底力―歴史・人・旅に学ぶ生き方』でも不安定な時代を誰もが元気に楽しく生きるための術についていろいろ考察しています。還暦未満のアナタにもきっと響く!

人生は実は後半戦こそが楽しい

還暦とは一体どのような年齢でしょうか。

日本の大学進学率は50%強なので、だいたい高卒半分、大卒半分と考えると日本人は平均20歳で社会に出る計算になります。人生100年時代と考えると、人間が社会で活動する期間は80年。するとその半分の40年が経過し、ちょうど折り返し地点にあたるのが60歳ですから、還暦とはマラソンの折り返し地点のようなものだと考えるのが自然です。

 

ちょうど人生の半分を走っていろいろなことがわかっているので、還暦からの後半戦は前半戦よりもっと賢く楽しく走ることができるでしょう。「まだ半分残っている人生を賢く楽しく走り抜こう」と確認するのが、還暦という年齢の持つ意味だと思います。

ところが世の中では、還暦後の人生はどちらかといえばネガティブに語られることが多い。それは日本以外の世界にはどこにもない定年という歪んだ制度があるためです。「定年を迎えるからそろそろ俺の人生も終わりだな……」、「定年後は第二の人生か……」とついつい錯覚してしまうのです。

しかし日本の一括採用、終身雇用、年功序列、定年というワンセットの歪んだガラパゴス的な労働慣行は、人口の増加と高度成長という二つの前提条件があってはじめて成立する特殊なものです。

人間の意識は制度によってつくられます。自分でしっかりと勉強しないと、人間の意識は社会制度を反映するので、定年という制度を疑いもせず鵜吞みにしている人は「定年後は第二の人生で、還暦で第一の人生は終わってしまう」と勘違いしてしまうのです。

もちろん、そういった考えは大きな間違いです。むしろ前半戦の還暦までが練習であって、これから本番の後半戦が始まるんだと捉えれば、折り返し後の人生のほうがずっと楽しくなるはずです。

コロナが明かした「人生設計は意味がない」

「還暦後のキャリア設計をどうするか」と計画を立てる人もいるようですが、僕は人生のキャリアを設計するという考え方自体がそもそも傲慢なものだと思っています。なぜならそんなものは設計できるわけがないからです。新型コロナウイルス感染症がいい例ですが、誰も想像していなかったパンデミックが発生したことにより、オリンピックを含めいろいろなことがご破算になってしまいました。

新型コロナにより、世の中は一変した(photo by iStock)

この先、何が起こるか誰にもわからないのに人生設計やキャリア設計を考えるのは、「俺は賢いから世界の先行きをある程度見通せる」という無意識の前提を置いているからです。でも、その前提のほとんどは単に現状の延長線上で考えているだけのいい加減なものです。

新型コロナウイルスの件ではっきりわかったと思いますが、一寸先は闇です。どんな未来が来るかは誰にもわかりません。人間にとって大事なのは将来を見通したり詳細な人生設計を立てたりすることではなく、何が起こっても生きていける適応力です。決して、ダーウィンの言う賢いものや強いものが生き残るわけではないのです。人生や社会は全て「運(偶然)と適応」なのです。