コロナ以後の世界に向けて「役に立たない歴史」を封鎖しよう

コロナで滅びゆく歴史(2)
與那覇 潤 プロフィール

たとえば防疫上の観点から考えても、この際、史料調査の類は最後まで(ないし永遠に)自粛を解除しないでよいだろう。数十年、数百年と手つかずだった古文書など、どんな未知の病原菌やウィルスを巣食わせているかわかったものではない。パチンコ店は封鎖が解かれないと経営者や従業員の生活に支障が出るが、現にこれまで読まれてこなかった文書が今後も読まれなかったところで、別に誰も困らない。

 

危機の前から何度も論じてきたが、自覚なく歴史を無効にする人たちは往々、物体としての史資料そのものを「過去」として愛玩するあまり、「現在」の出来事を見る際にも常に働くべき歴史の感覚を衰弱させてゆく。だとすればそうした物理的な「接触」に関しては、危機の後もむしろ禁じたままにする方が、コロナ以降の世界に歴史の居場所を作る糧になるだろう。

いまもそれがわからない人がいるのなら、最後に以下の言葉を贈りたい。

―「愚かな人だ。あなたの蒔くものは、死ななければ、生かされません。」
(『新約聖書』コリント人への手紙・第一)