「10万円給付」にマイナンバーカード普及が間に合わなかった日本の不幸

「健全な監視社会」は実現可能か?
大原 みはる プロフィール

「住民票がコンビニで取れる」だけでは…

マイナンバーカードを入手すると、住んでいる地域にもよるが、住民票の写しなどの公的証明書類をいつでもコンビニで発行できるようになる。カード交付開始当初、各地の地方自治体は住民に対して、目に見えるメリットとしてこの点を強調した。

たしかに便利になることは間違いないが、そういう証明書の利用機会は人によっては1年に1回、いや数年に1回あるかないかだろう。これっぽっちの利便性向上に対し、カード交付手続きのためには平日昼間に役所へ足を運ばなければならない。なかなか普及につながらないのも当然であった。

一方、住民一人当たりのメリットはわずかでも、膨大な証明書発行業務を抱える役所側にとっては「塵も積もれば山となる」で、カードの普及は悲願だった。

 

現在、多くの市区町村は証明書発行のため、役所(本庁)の窓口のほか有人の出張所や専用の発行機を設けている。サービスの維持には人件費、システム運用費のほか、場所によっては賃料も発生するが、証明書を1枚発行するための手数料なんて数百円だから、もともと大赤字。

役所としては、住民の利便性向上の面からも、窓口での公的証明書発行機能は極力本庁に集約し、あとは24時間365日対応可能なコンビニ交付に移行させたいのが本音だ。しかし、そうすればカードを持たない住民からはサービス改悪と受け取られるため、カードが普及してからでないと言い出せない雰囲気が支配していた。

そんな思惑のズレを埋めるべく、地方自治体はここ4年以上涙ぐましい努力をしてきた。たとえば千葉市はカードの交付開始初期に、公共施設の利用割引券を期間限定で申請者全員に進呈するとともに、プロ野球観戦チケットや図書カードの抽選プレゼントまで行った。