コロナ禍のイタリア人がマンションの「バルコニー」で歌い踊る理由

「誰も音楽を封鎖できない」
生田 哲 プロフィール

低周波の音が赤血球を若返らせる?

もうひとつ、よい知らせがある。ラトガース大学薬学部のサンチュル・ジー教授と音楽療法の研究者ジョン・スチュアート・レイド氏は、こう報告した※7

「古い赤血球に音楽を少なくとも20分間聴かせると、細胞の寿命が延びた。興味深い深いのは、低音(低周波、1~100ヘルツ)の音楽が最も効果的だったことである。すなわち、ピアノ、チェロ、ハープその他の楽器を使って低音で奏でた現代音楽やクラシック音楽である」

この効果があらわれるしくみはまだ解明されてない。研究が始まったばかりなのでやむをえない。だが、研究グループのスチュアート・レイド氏は、こんな仮説を立てている。

「ポップとかクラシックとかを問わず、低音の音楽によって発生した圧力が心臓のポンプによる圧力に似た効果をあらわし、ヘモグロビンに多くの酸素を取り込ませる。心臓によって作り出されるか、あるいは、音楽によって外から作られるかはともかく、この物理的な圧力が、ヘモグロビンに血液に溶けている酸素を取り込ませる」

古い赤血球に多くの酸素が与えられることで、細胞膜に埋まっているタンパク質が再生産され、細胞が若返るようだ。赤血球は全身の細胞に酸素を送るだけでなく、免疫系のはたらきにも欠かせない。通常の医療と異なり、音楽は無害であり、身体を傷つけることもない。音楽と免疫系のつながりが、未来の医療を拓くかもしれない。

本記事をまとめよう。緊張した神経を鎮め、喜びの状態にする手段はたくさんあるが、誰でも手軽にできるということを考えると、音楽を聴くことが最適だろう。好みの音楽には、緊張した神経を鎮めるだけでなく、イマジネーションを働かせることによって私たちを特別な場所や時間に運ぶ魔術のような効果がある。音楽にはブルーを吹き飛ばし、ウイルスやその他の病原体を退治する免疫力を高める効果がある。

 

参考文献
※1 National Geographic, June 24,2009 Bone Flute Is Oldest Instrument, Study Says
※2 The world greatest music. March 16, 2020
※3 Nature Neuroscience, January 9, 2011
※4 Kennedy Institute of Rheumatology, 16 July 2017
※5 Trends Cogn Sci. 2013 Apr;17(4):179-93. The neurochemistry of music
※6 Journal of Music Therapy, Volume 30, Issue 4, Winter 1993, Pages
※7 Testing a 2,500 year-old hypothesis: