ストレスによって人体がどのような状態になるかを見ていこう。人が怖れると副腎からコルチゾールが放出される。コルチゾールはストレスホルモンとも呼ばれる。それは、コルチゾールが私たちの体をストレス状況に対処する準備をさせてくれるからである。
コルチゾールの働きは、タンパク質をアミノ酸に分解し、このアミノ酸を肝臓で大量のブドウ糖に変換する。この大量のブドウ糖から大きなエネルギーが生まれる。この大きなエネルギーを使って私たちはトラから全力で走って逃げるなど、短期的な危機を脱する。
だが、コルチゾールにはマイナス面がある。それは、免疫力を低下させるだけでなく、成長ホルモンや毛髪の黒色色素の合成など、短期的には必須ではない活動を低下させることである。トラから逃げる際に、病原体に襲われることはないという想定のようだ。
だが、免疫系はウイルスなどの病原体に対するただひとつの対抗策であるから、怖れの感情、すなわちコルチゾールによる免疫抑制を無視するわけにはいかない。とりわけ、すでに健康に問題のある人にとっては重大である。