コロナ禍のイタリア人がマンションの「バルコニー」で歌い踊る理由

「誰も音楽を封鎖できない」
生田 哲 プロフィール

危機に怖れを感じるのは自然なこと

コロナ病を私たちは怖れている。これはストレスである。怖れるのは自然なことであり、悪いことではない。それは、怖れることで私たちは危機から逃れるための行動を開始するからだ。

たとえば、トラが私たちのすぐそばにいることを知ったら、全力で走って逃げて隠れるだろう。怖れは、私たちの命を守るために内部にもともと備わっている自然のしくみなのである。

だが、この自然のしくみには、ひとつ問題がある。このしくみは、そばにいるトラから全力で逃げるための短期の「急性ストレス」への対策であって、長期にわたる「慢性ストレス」への対策ではないことだ。自然は長期の危機にまで手が回らなかったようだ。「急性ストレス」は私たちの命を救うが、「慢性ストレス」は私たちを病気になりやすくするのである。

虎への恐れは我々に内蔵されたもの photo by iStock
 

だが、現在、私たちが直面しているコロナ病の状況というのは、トラが私たちのすぐそばにいるといった、私たちが全力で走って逃げて隠れることで解決する急性ストレスではない。ウイルスから走って逃げ隠れできるものではないからだ。

毎日、朝から晩までテレビや新聞は、世界中がコロナ病による危機であるというニュースを流している。私たちはウイルスを恐れて暮らしている。このように私たちは慢性ストレスにさらされている。