「〇〇不況」の正体〜布マスク2枚の悲劇を二度と起こさないために

誰もが変だと思っているのに…
三島 邦弘 プロフィール

何が問題なのか

書店現場の疲弊。その最大の理由は、「薄利多売」でしか成り立たない産業構造にある。簡単にいえば、書店業の利幅が低い(約2割)。他の小売業と比べ、半分以下とも言われている(飲食業と比較すれば3分の1以下)。

この条件下で商売を成り立たせるには、薄利多売せざるをえない。——いったん多めに仕入れて、ときに山積みをする。少しでも多く売れる工夫を凝らすが、残ったら返品をする。ひとつの「流れ」として、大量生産・大量消費が普通であった時代には、有効であったのだろう。だが、今は、というか、もう数十年前から時代に合わなくなっていた。

〔PHOTO〕iStock
 

にもかかわらず、この条件部分、産業構造にメスを入れることを先延ばしにしてきた。それが、先の書店員の叫びに直結しているのだ。

6年ほど前から、私たちの会社では、書店買い切りにより利益が倍になるシリーズ「コーヒーと一冊」を始めた。昨年は、少部数専用レーベルとして「ちいさいミシマ社」をたちあげた。どちらも、数を売らずとも、一冊売ることで書店の手元に残る額が倍増する条件を採った。

しかし。

業界全体の大きな流れが変わることはなかった。もしかすると5年以上もの間、大海に向かって小石を投げつづけてきたようなものだったのかもしれない。と思わざるをえなかった。

気候危機と同じようなもの。飛行機の使用を控える、プラ容器を使わない…こうした一人ひとりの取り組みは欠かせない。が、それだけでは猛烈な勢いで進む地球温暖化を止めることなど不可能。経済界や国全体での方向転換がないことには解決しようがないのだ。

出版の業界にも同じことが言える。

個人や一社の取り組みでは限界がある。

もはや、自分たちの業界には希望がないのか?