今、途上国の縫製工場にアパレル会社からの生産ストップが相次ぎ、縫製労働者たちの不当な解雇やレイオフが後を絶たないという。その原因は、いわずもがな世界中で猛威をふるう新型コロナウイルスだ。そこで話を聞いたのは、バッグ・アパレルなどを扱うブランド「マザーハウス」代表兼デザイナー山口絵理子さん。バングラデシュをはじめ6ヵ国の途上国に自社工場を持つ山口さんは、今起こっているこの問題をどんな風に捉えているのだろうか。そして、私たち消費者にできることとは? 早速、話を聞いた。

途上国の縫製工場を襲った悲劇の裏側

「現在250名の従業員を抱える弊社工場は、国から製造中止の要請が下された3月下旬に稼働をストップさせました。バングラデシュは、私たちのような質を重視したモノづくりをしているところはまだまだ少なく、いわゆるファストファッションと呼ばれるアパレルブランドの生産拠点。その時点で、すでに周りのほとんどの縫製工場が、大量の生産キャンセルを理由に、休業困難に陥っていましたね」

“モノづくり”を通じて“途上国”の可能性を世界中に届ける」をコンセプトに、バングラデシュ、ネパール、インドネシア、スリランカ、インド、ミャンマーの自社工場・提携工房で、ジュート(麻)やレザーのバッグ、ストール、ジュエリー、アパレルのデザイン・生産を行う「マザーハウス」。日本をはじめ、台湾、香港、シンガポールに40店舗を構えるグローバルなブランドとして、今年で創業14周年を迎える。2006年に設立後、これまで、ネパール地震、バングラデシュやスリランカでのテロなどの苦難を乗り越えてきた。このように製造業の彼らが、発注側の動向に振り回されてしまうのは、新型コロナウイルス以前に、長らく途上国が抱えている問題でもあるという。

バングラデシュの自社工場でバッグのサンプルをつくる山口さんとサンプルマスター・モルシェドさん。

「99%のバイヤーが、途上国を『単価の安いものをつくる生産拠点』として見ている中で、自社工場を抱えているという弊社のようなモデルは、非常に珍しいんですよ。大手のファストファッションブランドであっても自社工場という形態はとっていません。つまり、途上国の縫製工場は売り上げの99%が受注オーダーによるもの。そのオーダーがキャンセルになるというのは、工場がつぶれるのと同じことですよね。そこに『雇用を守る』という義務は発生しないので、残念ながら『解雇』は発注側にとって簡単なアクションになってしまいます」

途上国の縫製工場は、オーダーがあってはじめて成り立つ。その発注サイドに対する依存体質が根本的にある問題だと指摘する。

「小売と製造どちらも自社で行っているけれど、もし私が発注するだけの立場だったとしたら、この状況下ならオーバーキャンセルは当たり前の話。自国の不景気の波は、誰にもコントロールできませんから。以前ヨーロッパが不況に陥ったとき、ダメージを受けたインドの縫製工場の中から、プライベートブランドを立ち上げようとする人たち出てきたように、途上国の工場サイドは、もっと自助努力をして、困難を回避する術を持つべきだと思います」