オープンソース・インベスティゲーションを操る「デジタルハンター」たち〔PHOTO〕NHK

41歳のゲーマー、部屋から一歩も出ずに権力者の不都合な真実を暴く

謎のネット調査集団を追え

謎のネット調査集団

いま、世界を席巻している「ベリングキャット」と呼ばれる謎の調査集団について聞いたことがあるだろうか? あるいは、彼らが採用している革命的な技法「オープンソース・インベスティゲーション」については?

ラップトップ一台を武器に、世界中、いつどこからでも調査報道を行い、プーチン大統領や中国政府など、国際政治を動かす強大な権力と対峙して、世界の耳目を集める事件の真相を暴いていく。

ロシアの関与が疑われる、ウクライナ上空でのマレーシア航空機撃墜事件の真相や、アフリカでのカメルーン軍兵士らによる母子銃殺、あるいは新型コロナウイルスの震源となった武漢での惨状の実態など、いずれも政府当局が隠蔽しようとした「不都合な真実」の真相を次々と暴いていく。

 

NHKBS1で5月31日(日)午後11時から再放送するBS1スペシャル「デジタルハンター~謎のネット調査集団を追う~」では、アメリカ・イギリス・オランダ・オーストラリアに取材し、いまや世界のジャーナリズムの主流となりつつある「調査報道革命」の実態を密着取材したドキュメンタリーとしてお送りする。

こう書くと、何かアサンジ氏のウィキリークスのようなイメージを持たれるかもしれないが、それとは全く違う。はるかに能動的で、自らインターネット情報の海に分け入り、必要な情報を見つけ出し、分析して答えを出す。

そのようなことが可能になったのは、現在では、重大事件が起きれば、必ず周囲にいる人がスマホで画像・映像を撮影し、それらの大量のデジタル情報がSNSなどにアップされるからだ。

マレーシア航空機撃墜事件であれば、撃墜したミサイルを搭載した車両が、ロシア領内からウクライナ東部の撃墜現場に移動し、発射後はロシア国境に向かったという移動ルートを、その各地で地元の人が撮影しアップした映像を見つけて時系列的に解析することで暴けるのだ。

2014年7月ウクライナでのマレーシア航空機撃墜事件2014年7月ウクライナでのマレーシア航空機撃墜事件〔PHOTO〕NHK

しかし、これは簡単なことではない。画像や映像をアップする市民は、分析する側の都合など考えずにそれぞれが「勝手に」好きなSNSにアップしていくのであり、関係ない無限の他のデジタル情報の中に埋もれている。それらを効率よく見つけ出し、互いに照合することが重要だ。

さらに、画像や動画には「いつどこで誰が撮った」といった正確なキャプション情報をつけてくれているわけでもないから、それらを確定する分析技術が必要になる。そのために、画面の端にたまたま映っている樹木の影の長さと角度から撮影日時を割り出す、あるいは店の看板に注目する、そのほかあらゆる驚くような手法で事実を解明していくのだ。

驚くことにこうした作業は部屋から一歩も出ずに、粘り強くPC画面と向き合い、ネットからリアルの世界の真実に踏み込んでいくことで可能となる。

いま、急速に広がりつつあるこの調査報道革命は、世界を代表するメディアBBCやニューヨークタイムズでもチームが立ち上げられ、次々と成果を上げている。