「ウィルスとの共存」を明言…フランスが選んだ「出口戦略」の中身

コンセンサスを重視しながら、段階的に
髙崎 順子 プロフィール

民主的に、コンセンサスを取りながら

約1時間に及んだ演説の最後、フィリップ首相は議席に向かって言った。

「この発表をテレビや記者会見ではなく、国民議会で行ったのには理由があります。何よりも、民主的であるためです」

国民の代表である議員を通して、この戦略への反応、批判、疑問を吸い上げたい。地元や各業界の組合、経営者団体の意見を取り入れて準備を進めたい……そうしてコンセンサスを取るために、解除予定の2週間前と、時間的な幅を持たせたのだ。

「コンセンサスを取る」というのはフランス行政には馴染みの手法の一つで、新型コロナウィルスの流行前から用いられてきた。特に公衆衛生に関しては、中央省庁が細かく方針を固め、地方自治体と現場が運用する役割分担ができているため、各カウンターパートの連携が不可欠となる。フィリップ首相自身に地方都市の市長経験があり、その知見が活かされたとも言える。

しかしこの手法が選ばれるのは、「民主的であるため」というポジティブな意志からだけではない。コンセンサスなしに新しい政策や改革を進め、業界団体や労働者組合と折り合いをつけられない場合、この国では即、デモやストの実力行使が待っている。

しかもマクロン政権は昨年末、年金改革法案で事前の合意形成に失敗し、足掛け2ヶ月にも及ぶ大規模ストを招いたばかり。その社会的な打撃やリカバリに要する時間、労力を考慮すれば、事前にコンセンサスを取るほうが効率的かつ合理的と、骨身に沁みているのだ。

マクロン大統領〔PHOTO〕Gettyimages
 

そうして時間をかけ、周知し、意見を吸い上げて準備をした結果が、「穏やかに」「静かに」「適切に」運用された解除1日目なのである。