「ウィルスとの共存」を明言…フランスが選んだ「出口戦略」の中身

コンセンサスを重視しながら、段階的に
髙崎 順子 プロフィール

防護・検査・隔離で共存する

コロナウィルスの感染拡大に対応するために、世界の多くの国で都市封鎖や外出禁止など、社会活動を大きく制限する非常事態宣言が発令された。その終了に関する「出口戦略」がフランスで明示されたのは、禁止令解除の2週間前の4月28日だった。

発表の場は、日本の衆議院に相当する国民議会。コロナウィルス対策で陣頭指揮を取ってきたエドゥアール・フィリップ首相が壇上に立った。累積の死者数は2万3000人超に上り、「戦争状態」とまで表現された厳しい疫病禍から一歩踏み出す戦略を、首相はこう切り出した。

「このウィルスにはワクチンも治療法もまだない。集団免疫も獲得されていない。ウィルスは我々の間をめぐり続ける。好ましくないが、これが紛れもない事実である」「我々はこのウィルスと共に生きる術を、学ぶしかない」

フィリップ首相〔PHOTO〕Gettyimages
 

国を挙げた臨戦態勢からの、一大転換である。

演説はフランスの通例に則り、現状認識の共有から始まった。感染拡大のスピードを遅らせて医療崩壊を防ぐため、外出禁止令を発してから6週間。医療現場は疲弊しているが崩壊を免れ、入院者・ICU患者とも減少し、第一波を乗り切りつつある。

しかしこれ以上、社会を止め続けることはできない。さもなくば産業、経済、教育などの面で「没落のリスク」に転じてしまう。さりとてウィルスは依然としてそこにあるので、共存しながら社会を回していくしかないーー強い言葉を使いながら、そう表明した。

そのポイントは防護・検査・隔離であるとし、外出禁止令解除の方針を細かく示した。防護は1m以上の社会的間隔維持・手洗い消毒・マスク着用が「バリア行動」としてセットで奨励され、特に公共交通機関の利用時にはマスク着用が義務となる。

リモートワークの可能な職はその継続が経営者に求められ、そうでない職は業種別に60種類の衛生的運営指針を国が設定し、従業員の安全確保を義務付けた。フランス社会で経済と並び重視されている教育に関しては、こちらもA4で60ページ近い綿密な衛生運営指針書を国が作成、自治体と学校に適用を指示している。

ウィルス検査はそれまで発症者と医療・介護関係者に限定されていたが、5月11日からは対象を新規陽性者の接触者まで広げ、週70万回の実施体制を整えると、方針を大きく変えた。70万回は科学者の専門家チームによる試算からなり、解除後は新規陽性者が1日1000〜3000人発生する、との予想が根拠にある。彼らが週に20〜25人と接触すると想定し、その全員を検査する前提で設定された。検査は医療保険が全額カバーし、自己負担はない。