緊急事態宣言は徐々に緩和される見込みだ。3月2日からの休校でながく家にいて、ついつい子どもにイライラした人も少なくなかったのではないだろうか。実際、厚生労働省の発表によると、コロナ禍で虐待相談が1~2割増加しているという。

しかし、イライラすることが好きな人なんて、誰もいない。

ジャーナリストの島沢優子さんによる連載「子育てアップデート~子どもを伸ばす親の条件」。今回は「比較」についてとりあげる。島沢さんのお子さんは今23歳。しかし幼い時には、自分が虐待をしているのではと不安に思ったこともあるという。その状況を救ってくれたある先生の「言葉」とは。

20年前のほろ苦い記憶

ポテトサラダが好きだ。
じゃがいもをつぶし、キュウリを刻んで、スライスしたにんじんをゆで、ハム、そして我が家はリンゴに、ゆで卵も入れる。
最後の仕上げはマヨネーズ。
つるっとした手触りの、存在感あふれる白いチューブを手に取るたび、ふと頭に蘇る。

私にとって最初の子ども、23年前に生まれた長男は小さいころ、「葉物の野菜」が大嫌いだった。レタス、ほうれん草、チンゲン菜、一切食べない
3歳くらいの頃だろうか。夫の転勤で東京から仙台へ引っ越したばかりのことだ。公園でママ友たちとお弁当を持ち寄ってランチをすると、ある男の子はレタスをモリモリ食べていた。

「すごい! レタス、食べられるの?」

私の驚嘆に、その子のお母さんは、ふふんと鼻を高くした(ように見えた)。やや自慢げに(見えた)、「この子、レタスとか、ほうれん草とか、葉物の野菜が大好きなの。マヨネーズをつけるとどんどん食べちゃう」と嬉しそうだ。

「いいねえ。うらやましいなあ」
公園から帰った日の夜。
ちぎった山盛りのレタスに、ぐるぐると渦巻き状にマヨネーズをこれでもかと振りかけた。

「はい、どうぞ。これはうまいぞぉ~」
息子の前で、おどけながらマヨネーズがたっぷりついたレタスをほおばってみせた。息子はきゃっきゃと笑ってレタスに手を伸ばす。
(おおっ、これはいける!)

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そう思った瞬間、息子はレタスについたマヨネーズをぺろぺろなめ始めた。一枚ずつとっては丁寧になめ終わると、私に「はい、どうぞ」と返した。

「あの子は食べられるのに、どうしてうちの子は食べられないのか」
わずか3歳の息子を他人の子と比べてしまった。わが子が劣っているようで、それは自分がダメな母親と言われているようで、私は無性に悲しくなった。

思わず息子の頭をゴツンとこずいた。
火が付いたように泣き出す息子。寝ていた乳児の娘も一緒に泣き始める。私も泣く。たかがレタスを食べられないくらいで、散々な修羅場なのであった。