台湾のコロナ対策を賞賛する、日本の人たちに知ってほしいこと

市民運動は、多くのものを獲得してきた
李 琴峰 プロフィール

コロナ対策に危うさもあった

正直に言うと、今般の台湾のコロナ対策も、危ういところがなかったわけではない。防疫のために行った厳しい措置はしばしば、過度に私権を制限したり、法的根拠に乏しかったりして批判の的となった。2月下旬、対策本部がいきなり「国内の医療体制確保のため、医療従事者の出国を制限する」と言い出し、世論の批判を浴びたのが好例である。

また、高く評価された「マスク実名購買制度」が実現できたのも、国民一人ひとりに付与された「身分証番号」というものがあるからであり、この番号は就学、求職、納税、徴兵、診療から携帯電話の契約や銀行口座の開設まで、生活のありとあらゆるところで使われる。政府による国民の高度な管理を可能にするだけでなく、番号を見れば出身地や戸籍上の性別が分かるなど、個人情報の面でも悪用のリスクが憂慮される。

台湾で導入されたマスクを購入するためのアプリ〔PHOTO〕Gettyimages
 

更に、台湾のコロナ対策は手厚い補償がある反面、厳しい罰則がついていて、病状を隠したり、偽りの情報を拡散したり、隔離対象者が勝手に外出したりすると過料が待っている。

「マイナンバー制度」が不評だったことからも分かるように、日本社会は台湾社会より個人情報の扱いに慎重になる傾向がある。コロナ対策でも、罰則つきの規則ではなく「自粛」や「要請」がベースになっていること、そして政府が「緊急事態宣言」を出すのを躊躇ったことなどからも、台湾より私権の制限に対する抵抗感が高いことが分かる。

台湾で暮らしていた頃から、政府に対する不信感もあり、筆者は身分証番号をはじめとした国民管理制度に違和感を抱き、窮屈とすら感じていた。日本の制度の方が、むしろしっくり来る面もあった。だからコロナ対策においても、日本は何もかも台湾にならえばいいというわけではなく、またそもそも不可能だというのが筆者の立場である。