台湾のコロナ対策を賞賛する、日本の人たちに知ってほしいこと

市民運動は、多くのものを獲得してきた
李 琴峰 プロフィール

決まった給付金がまだ手元に届かず、国民が苦しんでいる最中に、わざと逆鱗に触れるかのように「改憲議論を」と言い出したり、検察庁法改正案を強行突破しようとしたりする。これでは火事場泥棒と批判されても仕方がない。

〔PHOTO〕Gettyimages
 

台湾で起きた大きな変化

しかし、台湾で二十数年を過ごした台湾出身者として、筆者は「台湾は素晴らしい、日本はダメ」みたいな短絡的なことを言うのがとても躊躇われる。外国人だから遠慮しているというわけではない。筆者は筆者なりに、台湾社会の現実、そして多くの問題点をずっと目の当たりにし、体感してきたからである。

長時間労働に低賃金、最低賃金を下回る給料設定や残業代の不払いが頻発し、労働基準法はまともに守られない。にもかかわらず不動産価格がとんでもなく高く、若者は飲まず食わずで一生働いても首都のマイホームには手が届かない。企業の経営者は専門性(特に文系の)を軽視し、金は出し渋るのにあれこれ理由をつけて学生や求職者に無償労働をさせたがる。

貧富の格差が大きく、富は高度経済成長期の恩恵を受けた高齢者層に集中している。政府は住民の意思に反して土地を強制収用し、政治家は汚職だらけで利権が渦巻き、食の安全までもが懸念される。同性婚は実現する見込みがなく、性的少数者の就職差別は日常茶飯事。バスと電車は時間通りに来ないし、道路はバイクが多くて空気が汚い。公衆トイレも汚い。人と人との距離が近過ぎるし、独善的な同情心や正義感が跋扈していて息苦しい。

――それが日本に移住する2013年まで、筆者が台湾社会に抱いていた印象だった。

しかしたった数年の間に、台湾では実に大きな変化が生じた。政権交代が起こってリベラル政党が与党となり、史上初の女性総統が誕生した。新しい政権は独裁時代の政治犯の名誉回復に努め、先住民族や移民、性的少数者の差別解消にも力を注いだ。インフラが充実し、街がみるみる綺麗になっていった。

2019年にアジアで初めて同性婚が合法となり、「リベラルな台湾」を国際社会に印象付けた。そして2020年の優れたコロナ対策。国として認められず、世界から見向きもされなかった国際社会の孤児である台湾が、まさか数年間で一躍して国際社会の優等生になるなんて、筆者は夢にも思わなかったのである。