「ポスト・コロナ」を生きるための現代思想――「ガイア」とは何か?

人間と自然の関係を再考する
森 正人 プロフィール

人間が地質年代に組み込まれることを意味する人新世。それは大規模な地政学的再編成の契機である。むろん、人間の自然へのインパクトは十分考慮されるべきだろう。しかし自然や環境は無垢の実体ではないし、インパクトもまた単純ではない。そしてそれは、人新世を主張する私たち「人間」とは何かを、この複雑な世界において再確認するきっかけでもある。

とりわけ、コロナウィルスの一連の出来事をとおして、私たちは人間と自然との関係を見直す契機にいる。ウィルスに感染した身体は危険で、とある市議がSNSに書き込んだ言葉を使えば「殺人鬼」と表現される。しかし、次々と形を変えるウィルスに完全に「勝利」することは、現時点では難しく、共生するしかないと言われる。

ウィルスが、人間の中に入り込めば、ウィルスと人間との境界はぼやける。私たちの身体は多孔的なのだ。しかもコロナウィルスによる一連の出来事は、この国がウィルス感染前から機能不全に陥っていたことを暴露してもいる。人間だけでなく、ウィルスは、そして自然は行為能力を持つのだ。

こうした人文学の問いは、実学志向の人たちからすれば、絵空事、理想論、あるいは空想論と一笑に付されるかも知れない。とりわけ、私たちは危機に陥るとき「強いリーダー」にすがりつき、その内実を俯瞰する営みに背を向ける。

しかし、仮に既存のシステムが機能しなくなっているのであれば、絵空事であっても真剣に考えてみる価値はあるだろう。それが空想論に過ぎないと言われるのは、きちんと「問い」に向き合ってこなかったからではないだろうか。