2018年に開催された盗撮事件への抗議デモ〔PHOTO〕Gettyimages

韓国の「フェミニズム」ムーブメントが達成してきた、これだけのこと

女性による政党も発足した

韓国の女性が声を上げている。セクハラを告発し、女性のための政党を作り、堕胎罪に反対するデモを行う――かつては考えられなかった女性たちの行動が、いまや当たり前のものとなった。いったい韓国社会に何が起きたのか。韓国の空気をガラリと変えた「江南駅殺人事件」から4年が経った今、6人の著者が、様々な分野の「女性たちの変化」を前後編で紹介する。

※執筆者:尹怡景、すんみ、ファン・ギュンミン、宣善花、木下美絵、キム・ジュヒ。企画・翻訳協力:小山内園子。執筆者の選定は翻訳家のすんみさんの協力のもと行いました。各章の担当は記事末尾に掲載しています。

【前編はこちら】

女性の自己決定権:「堕胎罪」

2019年4月11日、韓国の憲法裁判所(憲法の解釈に関わる裁判を行う裁判所)は「堕胎罪」の違憲性を認定した。

少しややこしいが、韓国憲法裁判所が下す「決定」には「単純合憲」「限定合憲」「憲法不合致」「単純違憲」などグラデーションがある。堕胎罪については、妊娠女性の自己決定権を侵害するおそれがあるとして、裁判官9名の意見は、憲法不合致4:単純違憲3:合憲2で、「憲法不合致決定」という違憲性を宣言する決定が下された。

これによって、堕胎した本人が罰せられる「自己堕胎罪」、堕胎の措置を行った医師が罰せられる「同意堕胎罪」を定める刑法269条1項等の規定は、韓国刑法が制定された1953年から66年が経った2019年に事実上の効力を失うこととなった。

これまでも憲法裁判所は堕胎罪について2012年に一度判断をしており、胎児の生命権保護という公益を達成するため、私益である妊婦の自己決定権に対する過度な制限ではないなどを理由に、裁判官4:4の合憲判断に至った経緯がある。

韓国の憲法裁判所〔PHOTO〕Gettyimages
 

堕胎罪について当時の韓国国民の意向がうかがえる一つの尺度として、「青瓦台国民請願」がある。青瓦台国民請願とは、政府に自由に請願できる国民請願掲示板のことだ。2017年秋にこの掲示板に堕胎罪の廃止を求める請願が出されると、一ヵ月という短い期間に23万もの同意が集まった。

韓国政府がこの結果を受け、社会的議論が必要であると答弁を行ったことは大きな話題となった。その関心は、当時審理中だった今回の堕胎罪についての憲法裁判に移っていった。関連団体を始め、人権団体、宗教団体などはそれぞれが望む社会を求め、意見書を提出したりデモを行うなどして社会に向けて声を発した。