「除霊」の儀式はどう行われるのか?古刹の住職が語る、死者との対話

宮城県「通大寺」金田諦應住職に聞く②
奥野 修司 プロフィール
 

金田住職は太鼓を叩き、「甘露門」というお経を詠み、最後に洒水をかけると、ぐったりしていた弘子さんの顔にようやく赤みがさしてきた。

軍人の霊が語ったように、終戦前の昭和20年7月に呉軍港はたびたび米軍の爆撃を受けている。この爆撃で、戦艦日向や戦艦榛名、空母天城など多数の艦が失われた。このとき戦死した中に水島という軍人がいたのではないか。そう思って金田住職に「調べてみましょうか」と尋ねると、「いや、それはやめましょう。これはあくまで弘子さんの物語です。現実の世界と一緒にするときりがなくなります」といった。

東日本大震災の津波で流されたワカナちゃんの父親など、水と関わりのある霊があらわれるのは、これ以降のことである。

3.11の後、金田住職は他の宗教者らとともに三陸海岸を行脚した

死者との対話、そして儀式

「除霊」といっても、映画のようにいきなり祈祷をするわけではない。まず死者との対話ができるかどうかだ。憑依した霊が語る言葉をひたすら傾聴し、細切れの言葉を一つの物語にすることで道筋を立て、霊が納得できるようにする。生身の人間と同じである。納得しないかぎり本堂まで歩いてくれない。納得さえしてくれれば、足が重くても本堂にはたどり着く。そこまで行ってくれれば、あとは金田住職が「太鼓」「読経」「洒水」といった伝統的な儀式の力で死者のいくべき世界へ導く。

では太鼓、読経、洒水にどんな意味があるのだろうか。金田住職は言う。

「太鼓はリズムをとるためです。ドンドンではなくドドーンドンドン。御神楽がそうですが、聞いているだけで涙が出てきます。昔から伝承されてきたリズムにはすごい力があるんですね。あのリズムで霊を追い出すというイメージです。甘露門というのは、鬼を集め、地獄の門を開けるという呪術性のあるお経で、最後に、進む道を光のシャワーで照らしてくれます。ただ、これで憑依が解けるのは東北だからであって、外国人の前でやっても無理です。それが風土というものでしょう」

洒水には、キリスト教でいう聖水のようなイメージがある。それが湧き出る秘密の井戸でもあるのだろうか。すると金田住職は「ああ、それは水道水ですよ」と笑った。

「この水はな、栗駒山から汲んできた聖水だぞ、ってかけたんです。水と人との関係って面白いですね」

聞くたびに、映画の『エクソシスト』の場面に似てるように思う。水や火、音、臭いといったものは、世界中のどの宗教にも共通するのかもしれない。

もっとも、これは金田住職の「除霊」であって、「除霊」に共通のマニュアルなどはないという。師匠から弟子への口伝であったりするから、寺によっても違うそうだ。金田住職の場合はというと「父親がやっていたのを覚えていて、見よう見まねでやりました」