「検察庁法改正」の論じ方

検察官と政治との距離はどうあるべきか
亀井 源太郎 プロフィール

冷静な議論と丁寧な説明を

では、このような批判は妥当するのであろうか。正直なところ、その評価について筆者はやや迷っている。

たしかに、政権が改正後の制度を用いて役職定年の例外を認めるか否か恣意的に決定した場合、時の政権に弓を引いて政権に睨まれることとなった検察官は、役職定年延長という「恩恵」を受けられないこともあろう。しかし、この場合でも、65歳までは検察官としての身分が保障される。

役職定年延長という「恩恵」が、検察官の「必要があれば政府・与党の有力者であっても捜査し訴追する」という決意にどの程度影響するであろうか。少なくとも筆者には、その程度の「恩恵」が人をしてその信念をげさせるとは思えない。はたして、職業人としての魂は、役職定年延長程度の「恩恵」で買えるのであろうか。その「恩恵」は「魂の値段」としては安すぎないだろうか。

 

あるいはこのような議論は、筆者が偏屈だということに由来するのかもしれないし、理想論に過ぎるのかもしれない。

しかし、はたして。広島地検は、本稿執筆中も、前・法務大臣夫妻に関する捜査を粛々と進めている。彼らは検事長勤務延長や「検察庁法改正」の動きを当然に知っているにもかかわらず。

他方、筆者にも、Twitterユーザーや世間が本改正に強く反応した気持ちは理解できる。検事長勤務延長とそれについて納得できる丁寧な説明がなかったことは、政府・与党の姿勢に対する国民の疑念を生じさせるに十分であっただろう。「#検察庁法改正案に抗議します」とのハッシュタグを付した投稿がこれだけ行われた背景には、検事長勤務延長に対する「モヤモヤ」と不信がある。