「検察庁法改正」の論じ方

検察官と政治との距離はどうあるべきか
亀井 源太郎 プロフィール

検察官と政治の距離

もっとも、検察官の職務の独立性が重要であることと、検察官に対して政治がいっさい関与すべきでないということとはイコールではない。

そもそも、検察官は行政官である(検察庁は法務省に置かれる「特別の機関」である。法務省設置法14条)。このため、法務大臣は個々の事件の取調べまたは処分以外のことがらについては、検察官を指揮監督することが許される(前述)。

検察権が行政権に属することや、検察権の行使については内閣が国会に対して――ひいては主権者たる国民に対して――責任を負うべきであることから、法務大臣にこのような権限が認められているのである。

検察庁庁舎〔PHOTO〕WikimediaCommons;Copyrighted by っ
 

また、現行の検察庁法も、検察官の人事に内閣や法務大臣が関与することを認めている。たとえば、検事総長、次長検事、検事長については、「その任免は、内閣が行い、天皇が、これを認証する」とされ(15条1項)、検事長、検事、副検事の職は、「法務大臣が、これを補する」とされているのである(16条1項)。

このような検察庁法の規定ぶりからは、現行検察庁法が、検察官を内閣とまったく無関係な存在と位置付けているわけではないことが看取されよう。

このため、「三権分立なんだから検察官の人事に内閣や法務大臣が口出しできるしくみは問題である」という単純な論法には賛成できない。(先に述べた、そもそも検察官が行政官であることを別にしても)現在の検察庁法の規定を無視した議論と言わざるを得ないからである(あるいは、単純に「三権分立」を持ち出す論者は、現行検察庁法も問題だというのであろうか。それはそれでひとつの立場であるが、これまでなぜ問題とされてこなかったのであろうか)。

大切なのは、検察官の職務の独立性を担保しつつ、検察官の職務執行につき内閣や法務大臣(ひいては国会、さらには国民)がその適切さをチェックできるしくみをバランスよく構築することであり、今般の「検察庁法改正」をめぐっても、念頭に置かれるべきは、このようなバランスである。